【vol.52】マイナーキー実践編 ~その1~ マイナーキーのⅡ-Ⅴについて
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こんにちは、大沼です。
さて、これまで3回に渡って、マイナーキーの基本知識として、
・ナチュラルマイナースケール
・リラティブ・キーとの関係性
・マイナーキーのダイアトニックコード
について、学んできましたね。
やはり、まずはこの辺りの事を知っていないと、音楽をやる上で色々と不備があります。
どんな分野にも、「必要最低限の知識」と言うものがありますからね。
と言う事で、ここ3回の講座でマイナーキーについての基本は抑えたので、今回からは実戦です。
内容としては、
『マイナーキーのツー・ファイブに対するソロの弾き方』
を、学んでいきます。
いきなりソロかよ!と思うかもしれませんが、マイナーキーのツー・ファイブ進行を理解するには、実際の弾き方で学んでしまった方が効率が良いので。
ただ、いきなり対応法を全て学ぶ訳ではなく、まずは「基本的な理屈と考え方」についてです。
それでは始めていきましょうか。
まず、keyはいつものようにkey=Amで。改めてダイアトニックコードを確認してみましょう。
もう見なれたコード群ですね。
これらのコードもメジャーキーの時と同じように、トニック(T)、ドミナント(D)、サブドミナント(SD)に分類します。
正直なところ、マイナーキーのダイアトニックコードの分類は、正確に解説すると少し複雑なので、まずは重要なところだけ把握していれば十分です。
今後必要になった時に、表を見ながら分析していけば良いので。
で、大まかには以下のようになるのですが、まずは赤字で示したインターバルのコードのみ役割を覚えてください。
さて、なぜかⅤ度に、ナチュラルマイナースケールの構成音からは導き出されないコードが出てきましたね。
先の講座で、
『マイナーキーの時は、イレギュラー的に使うコードやスケールを変化させることがある』
と、お話ししたと思いますが、さっそくそれが出てきました。
と言う事で、ここがマイナーキーを攻略していく上で基本であり、一番重要なポイントなのですが、
元々のマイナーキーのⅤ度のコードは「Ⅴm7」になるところを、マイナーキーのⅡ-Ⅴ-Ⅰの進行の時は、Ⅴm7をⅤ7に変化させる
のです。
これにはちゃんと理由がありますので、詳しくやっていきましょう。
まず、メジャーキーのダイアトニックコードの分類を思い出して欲しいのですが、コード進行は基本的に、一番落ち着く、トニックコード(T)に進んでいく、と解説しました。
そして不安定なドミナントのコードから、安定するトニックのコードに向かうⅤーⅠの進行は、最も力強く自然な流れを生むので、強進行と呼び、楽曲の中でよく出てくる、と。
この強進行が、なぜ聴覚上の安定感をもたらすのかについては次回詳しく解説しますが、実は、Ⅴ7の中のある1音が重要な役割を果たしているのです。
で、その1音とは何かと言うと、今回のkey=Amの例では、Ⅴ7にあたるE7コードのM3rd、G♯音がそれに該当します。
key=Amの基準スケールである、Aナチュラルマイナースケールには、本来、G♯音は含まれていませんよね?
key=Amのトーナル・センターであるA音から見ると、G♯音はM7thにあたります。
ここで一番最初の、key=Amのダイアトニックコード表を思い出して欲しいのですが、本来、Ⅴ度のコードはⅤm7であり、key=Amの場合、それはEm7が該当していますね。
Ⅰm (Ⅰm7) Am (Am7)
Ⅱm(♭5) (Ⅱm7(♭5)) Bm(♭5) (Bm7(♭5))
♭Ⅲ (♭ⅢM7) C (CM7)
Ⅳm (Ⅳm7) Dm (Dm7)
Ⅴm (Ⅴm7) Em (Em7)
♭Ⅵ (♭ⅥM7) F (FM7)
♭Ⅶ (♭Ⅶ7) G (G7)
ですが2つ目に挙げた表では、主要和音としては、Ⅴm7ではなく、Ⅴ7が出てきています。
この2つのコードの違いは、コードを押さえてみるとわかりますが、それぞれの3rdにあたる音、G音とG♯音ですよね。
※Em7
※E7
この1音の変化により、マイナーキーの強進行、即ちⅤ7-Ⅰmの流れが出来るのですが、コードの構成音音が変化しているので、元々の基準スケールである、Aナチュラルマイナースケールにも影響を与える事になります。
変化している部分は、先にも書いた通り、Aナチュラルマイナースケールのm7th(♭7th)であるG音が、M7thにあたるG♯音になっている所ですね。
そしてこの変化により、Aナチュラルマイナースケールはどうなるのか?と言うと、「Aハーモニックマイナースケール」と言うスケールに変化します。
※Aハーモニックマイナースケール
このスケールの詳しい解説は、今後の講座でやっていきますので、ハーモニックマイナースケールは、ナチュラルマイナースケールのm7thを半音上げて、M7thにしたもの、とだけ覚えておいてください。
そもそも、なぜこのような変化をさせるのか?についてなのですが、これは、導音(どうおん、英語ではリーディング・トーン)という概念が元になっています。
導音とは、多くの場合、トーナル・センター(トニック)に対して半音下に接する音を指すのですが、調性が聴覚上で明確である場合に、この音が鳴ると、半音上のトーナル・センター(トニック)に進んで解決したくなるのです。
この様に、「トニックを導く音」として「導音(リーディング・トーン)」と呼ばれるのですね。
今回の例で言うならば、AナチュラルマイナースケールのA音や、Am(Ⅰm)コードを事前に聴いていて、それがトニックである、と認識している場合、G♯音を聴くと、半音上のA音に進みたくなる(解決したくなる)と、こう言うことです。
これは実際に弾いてみればわかります。
例えば、Aナチュラルマイナースケールを弾いた後、Aハーモニックマイナースケールを弾いてみると、G♯音を弾いた時点で、ナチュラルマイナーの時より強く、次のA音に進みたくなる筈です。
コード進行の場合も同じで、元々のkey=AmのⅤm7を使ったⅡ-Ⅴ-Ⅰである、
Bm7(♭5)⇒Em7⇒Am7
の進行よりも、
Bm7(♭5)⇒E7⇒Am7
の進行の方が、Ⅴ度のコードの時に、強くⅠm7に解決したくなりますよね。
これらの話をまとめると、
ナチュラルマイナースケールのままだと、トニックに半音下で接する導音が無く、ハーモニーとしては不安定なので、
ドミナントコード(不安定)⇒トニックコード(安定)
の流れをより強固にする為に、Ⅴm7を、導音を含んだⅤ7に変えて、よりナチュラルな解決を促す、
と言うことですね。
先ほども例に出しましたが、Em7⇒Am7よりも、E7⇒Am7の方が明らかに解決感が強いですよね?
この様な理由から、マイナーキーのダイアトニックコードとしては本来出てこない、Ⅴ7というコードがドミナントとして出てくるのです。
と言う事で、今回はこの辺りで一度区切りたいと思います。
段々と解説が、専門用語のオンパレードで、複雑になってきましたね。
基本的には、まだ解説していない言葉は使っていないはずなので、よくわからない単語や概念が出てきたら、過去のテキストを復習してもらえればきっとわかるはずです。
重要なのは、頭で理屈を理解するのと一緒に、実際にギターで弾いてみて、耳でも理解しておく事です。
今回やったこととしては、
・ナチュラルマイナーとハーモニックマイナーのスケールの違い
・導音の意味と効果
・Ⅴm7⇒Ⅰm7と、Ⅴ7⇒Ⅰm7の解決感の違い
と、こんなところですね。
それぞれのスケールやコードをじっくりと聴きながら弾いてみて、耳でどう感じるのか?と言う部分を確認しておきましょう。
では、今回は以上になります。
ありがとうございました。
大沼
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