こんにちは、大沼です。
メルマガの読者さんから『「モード」の使い方がわからない』という質問を頂いたので、
それに対する返信をこちらにも載せたいと思います。
正直、基礎楽典、基礎理論を覚えていない人にとっては意味不明だと思いますので、
その場合はスルーで。いつか興味が出てきたら読んでください。
僕自身、ジャズプレイヤーではありませんし、ジャズ系のアドリブ理論などは独学なので、
正式な教育は受けていません。
なので『具体的に演奏ではどうするのか?』という、実際の手法ベースで解説しています。
アカデミックな知識として学びたい人は、専門の先生に習ってくださいね。
あしからず。
(※ちなみに、『モード(モード奏法)』に関しては、こちらの記事からも詳しく解説しているので、
合わせて読んでもらえると理解が深まると思います)
~~~以下、質問メールへの返信文~~~
ではまず「モードは覚えている」とありますが、これはおそらく、
チャーチモードなどの各スケールポジションを覚えている、ということだと思うのですが、いかがでしょうか?
(アイオニアン~ロクリアンや、ハーモニック、メロディックディックマイナー系の各種)
で、それを何時、どう使ったらよいのかがわからない、と。
その疑問を解決するには、モードの使い方の前に、
モードとはどういうものなのか?ということをハッキリさせなければいけません。
モード(旋法)という概念自体は、大昔からあるようなのですが、
おそらく○○さんが知りたいのは、ジャズ、フュージョンの系譜から始まる、
アドリブ論としての「モード」のことでしょう。
それについては正直、僕自身がジャズ系のプレイヤーではないですし、
ジャズ系の音楽史や演奏論は独学なので
ざっくりとしか解説することができません。
なのでとっつきやすさ、わかりやすさ重視でいきます笑。
ジャズ系専門の人にこの話を聞かせたら「ちょっと違うよ」と言われるかも知れませんが、笑
細かいことは置いといて、「実際どういうことをやるのか(演奏するのか)」に重点をおきます。
では、いきましょう。
まず、『モード』というものの誕生までを理解しなくてはならないのですが、
ジャズ発展の歴史の中に、「ビバップ」というもの(ジャンル、スタイル)がありました。
(今でも、そういうスタイル(領域?)はありますが)
そのビバップというジャンルの細かい話はさておき、今回はアドリブ論の話なので、ざっくりと、
「ビバップでは、演奏者が実際にアドリブでどんなプレイをしていたのか?」というと、
主に『”楽曲のコード進行に合わせて(対応して)”アドリブのフレーズを弾いていた』
のです。
ここで重要なのは、『コード進行に合わせて(対応して)いた』というところです。
コード進行に合わせる、ということは、ある程度の自由度はあれど、
『コード進行』という『制限』があるので、ずーっと何年もミュージシャンがビバップ的な演奏していると、
いつかどこかで、アドリブにバリエーションの限界がくるのですね。
要するに、『コード進行という制限』のあるものを、ジャズプレイヤーが毎晩毎晩、何年も演奏し続けるわけですから、
その内行き着くところまで行っちゃって、『制限』がある為に、誰がやってもある程度似たような感じのアドリブになってくる、と。
そうなってくると、単純にやっている側も、もっと他の事をやりたくなってくる。
で、出てきたのが『モード(モード・ジャズ)』です。
(正確に言うと、色々と手法を実験された後、手法が確立された、という感じでしょうか)
ビバップの音楽的特徴として、『コードが進行し続ける(短い間隔でころころコードが変わっていく)』
というものが有ります。(これはビバップに限った話ではないのですが)
コードが進行する、ということは、調性(key)が、曲の中のある範囲で(一定以上)固定されるということなので、
その進行の中でアドリブをとる時、『どんなスケールで演奏するのか?、どんな音が使えるのか?ということが、(ほぼ)決まってくる』わけですね。
例えば、とある曲の中に、CM7→Am7→Dm7→G7→(CM7)という進行があったら、
それはどう考えてもCキーの進行なので、Cメジャースケール関係のスケールでアドリブをすることになりますよね。
この進行の上でアドリブする場合、誰が弾くとしても、ほぼ間違いなく、
Cメジャースケール系のスケールで弾くことになります。
これは要するに、『「CM7→Am7→Dm7→G7」というコード進行に合わせて(対応して)いる』
ということですよね。
で、『コード進行に対応する』ので、『やれることが限られてくる』と。
その制限によって、アドリブ手法の音楽的発展として行き詰まったのが「ビバップ」です。
じゃあそれならば、
『今までの、ビバップ的な方法論では、「(基本的には)コード進行」に従ってきたけど、
別の手法をベースにした新しい形態で演奏しよう(したい)』
という感じで出てきたのが『モード』です。(※モードと言う概念はもっと昔からありますが)
『モード』とは、日本語訳では『旋法』、要するに『旋律(メロディ)の手法』みたいな話ですので、
『コード主体のアドリブ法』に対して、『旋律(メロディ)主体のアドリブ法(もしくは構築法)』
として表れたものです。
で、ここまでがモード登場の歴史の話で、ここからが実際に演奏するときの音楽理論の話です。
ビバップの時のような「コード進行に対応するアドリブ法」というのは、先にも書いたような、
『CM7→Am7→Dm7→G7→(CM7)の進行の上では、Cメジャースケール系のスケールでアドリブする』
という、
『調性がハッキリしたコード進行の上で、コード進行に対応したスケールでアドリブする』
というものですよね。
ポピュラーミュージックを含む、世の中の曲の大半は、
このアドリブ論でアドリブをします(する必要がある場合は)。
なぜなら、『コード進行が明確に調性を示しているから』ですね。
この辺りが解説されるとき、理論書などでは、モード関係の解説として、
『CM7→Am7→Dm7→G7→(CM7)という進行に対応するスケールは、
CM7→Cアイオニアンスケール
Am7→Aエオリアンスケール
Dm7→Dドリアンスケール
G7→Gミクソリディアンスケール
となる』
みたいな解説がされていると思います。(大体のものは)
これはこれで正しいんですが、上記コード進行の上で何か弾く、という場合、
プレイヤーは実際に演奏する時、何を考えているのかというと、
基本的には、
『Cメジャースケール関係のスケール(構成音)をベースにフレーズを組み立てよう』
ということです。(人と状況にもよると思いますが)
別に、コードが変わるたびに、「ここはアイオニアンで、次エオリアンで、次はドリアンで~」みたいなことは、
考えていないわけです。(もちろん考えても良いし、深いところではその論法も理解してやっているでしょう)
もうちょっと正確に言うと、上のコード進行の中で弾くならば
『コード進行を把握して、コードに対しての1音1音の関係性に気を配りながら、
Cメジャースケール関係のもの(フレーズなど)を使って演奏する』
と、こんな感じです。
なので、ぶっちゃけ、モード的なスケールの切り分け、みたいな事は(あまり)しない(考えない)のです。
じゃあ『モードの手法』とはどういうものなのか?、をざっくりと説明すると、
『”演奏者が”あるコードに対して、どのモード(≒スケール)で弾くのかを決める』
といった感じになります。
おそらく理論的には、この説明は100%正しいとは言えないのですが、
実際に何をやっているのか?という部分だけを見たら大体こうなっています。
『モード』は『旋律の(を基準にした)手法』ですが、『楽曲』を演奏する以上、
その曲を構成する、Key(調性)とコード進行がありますよね。
「コードがころころ変わる(短い範囲、もしくは短い時間で進行していく)」と、
それは結局ビバップと同じ状態になるので、
あまりコードを変えない(長い範囲で同じコードを続ける)、
『モード的な(解釈のできる)曲』があるわけです。
例えば、とある曲で、CM7が4小節くらい続く箇所があるとしましょう。
その部分でアドリブを取る場合、素直に解釈するならば、まずは、
「CキーのⅠM7として見て、Cメジャースケールで演奏しようかな」という考えになるかと思います。
ですが、このCM7が4小節続く箇所を、『モード的に解釈しようとする(=旋律主体で解釈しようとする)』と、
先ほどの「CキーのⅠM7として見る」方法の他に、『GキーのⅣM7として見る』ことも出来るわけです。
例えばこの、CM7、4小節を、
・CキーのⅠM7として見た場合、そこはCアイオニアンスケールでアドリブをする
=Cアイオニアンの『モード』で演奏する
ということになり、
・GキーのⅣM7として見た場合、そこはCリディアンスケールでアドリブをする
=Cリディアンの『モード』で演奏する
ということになります。
今までは、
『”コード進行に対応して”アドリブをしていた』
のが、
『モード(旋法)を基準に、そのコードに対して、演奏者側が何をするのか(どう弾くのか、どう解釈するのか)を決める』
のが『モード』の手法と、こういうことです。
(「演奏者が決める」という表現は、理論的には正確性に欠ける気がしますが、
最初はこう思っていた方がわかりやすいでしょう。)
上の例だけを見ると、「結局、演奏者がコードに対応してない?」と思うかも知れません。
でもそれは場合によって違うのです。(対応している「とも」言えるんですが)
とある楽曲の中で、『モード的に解釈しても良い(することが出来る)部分』がある場合もあれば、
曲を作る段階で、『ここからここまではこのモードで演奏する』ということを前提に、
コード進行とメロディーを構成する場合もある、ということです。
(ハービーハンコックの代表曲などが、構成がシンプルでわかりやすいかもしれません)
この『モードの手法』が可能になる前提として、
『人間が音楽を聴いているときに感じている調性』というものがあります。
例えば、これまで例に挙げたCM7関係でいうと、
Dm7→G7→CM7という進行を聴いた場合、CM7はCキーのⅠM7に『感じる』わけです。
でも、いきなりCM7のコードをパーンと鳴らされると、ⅠM7のように感じながらも、
コード1つだけでは調性がハッキリしないので、宙ぶらりんな感覚も同時にあるのです。
そこに、旋律(モード)主体の解釈で演奏する(もしくはメロディを当てる)ことによって、
「コード進行に対応していた時の制限」を取っ払おうとした(広げようとした)ものがモードです。
モードの手法が確立する前までの、ビバップなどの曲では、
CM7→Am7→Dm7→G7という進行=Cメジャーキー関係のロジックでアドリブをする
という感じだったのが、
例えばCM7のコードが4小節続く範囲がある曲では、そのCM7の4小節の場所では、
Cメジャーキー関係のスケールでアドリブしても良いし、
Cリディアンのモードとして、Gメジャーキー関係のスケールでアドリブしても良い、
という、『制限の拡張』が生まれるのです。
(この例だと、モード的には、多くの場合リディアンで演奏すると思いますが)
かなり長くなりましたが、この、『モードの手法』の基本的なロジックを理解したうえで、
モードの理論で演奏されている曲やソロをコピーしていけば、
段々と使い方がわかっていくと思います。
~~~本文終わり~~~
と、以上が「モードの使い方(基本的な考え方)」になります。
正直、この辺は「誰にでもわかるように」解説するのは結構難しいです。
もっとよく知りたいけど意味わからん!って人はメッセージください。
では!
大沼
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