vol.08 マイナー系モードスケールの響きを感じてみる
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では、vol.08、始めていきましょう。(※前回vol.07はこちらから)
前回はメジャー系だったので、今回は、マイナー系モード・スケールについてです。
チャーチ・モード7種の内、マイナー系のスケールは、ドリアン、フリジアン、エオリアン、ロクリアンでしたね。
vol.06でもお話ししましたが、エオリアン=ナチュラルマイナーなので、このスケールの構造をマイナー系の基準に見る、と。
これらのスケールも、1オクターブのブロックで確認しておきましょう。
メジャーの時と同じ様に、今回は3ノート・パー・ストリングの方法で見てみます。
と、言いつつも、vol.06で弾いたものとほぼ同じですが。
・エオリアン(tonic、M2nd、m3rd、P4th、P5th、m6th、m7th)
・ドリアン(tonic、M2nd、m3rd、P4th、P5th、M6th、m7th)
・フリジアン(tonic、m2nd、m3rd、P4th、P5th、m6th、m7th)
・ロクリアン(tonic、m2nd、m3rd、P4th、dim5th、m6th、m7th)
それぞれ、インターバルと、指板上での音の配置を確認しておいて下さい。
次に、各スケールから成り立つコードですが、トニック(ルート)から3度積みの場合、エオリアン、ドリアン、フリジアンからは『Xm7』、ロクリアンからは『Xm7(♭5)』が形成されますね。
両者の構成は、
・『Xm7』→root、m3rd、P5th、m7th
・『Xm7(♭5)』→root、m3rd、dim5th(♭5th)、m7th
となっているので、これらの音と短2度の関係性にあたる音、トライ・トーンを形成する音がアボイド・ノートになるわけです。
具体的には、
・エオリアン → m6th
tonic、M2nd、m3rd、P4th、P5th、m6th、m7th
・ドリアン → Xm7に対してはM6th、Xm6に対してはm7th
tonic、M2nd、m3rd、P4th、P5th、M6th、m7th
・フリジアン → m2nd、m6th
tonic、m2nd、m3rd、P4th、P5th、m6th、m7th
・ロクリアン → m2nd
tonic、m2nd、m3rd、P4th、dim5th、m6th、m7th
と、これらの音がアボイドになります。
ドリアンでパターンが2つ出てくるのは、そもそも、7度(M7th or m7th)の代わりに、6度(M6th)を含んだ、シックス系の4和音(X6 or Xm6)を使う場合がある為です。
この様なパターンは、前回のメジャー系3種の時には、6度にアボイドが来なかったので見られませんでした。
ですが、今回のマイナー系の場合は、6度にアボイド(m6th)が来る事があるので、M6thを含むドリアンの場合はコードに対応して使い分ける、と言う事ですね。
では、これらを踏まえた上で、モード・スケール的な観点から見た場合の、特性音を確認していきましょう。
メジャー系の時にアイオニアンを基準にした様に、マイナー系ではエオリアンの構成が基準です。
よって、このスケールとの差異が特徴になり、下記の赤字の音が特性音とされています。
・エオリアン → 6度がm6thで普通なのでそこが特性
tonic、M2nd、m3rd、P4th、P5th、m6th、m7th
・ドリアン → 6度がM6thになっているのでそこが特性
tonic、M2nd、m3rd、P4th、P5th、M6th、m7th
・フリジアン → 2度がm2ndになっているのでそこが特性
tonic、m2nd、m3rd、P4th、P5th、m6th、m7th
・ロクリアン → m2ndとdim5thが違うので両者が特性
tonic、m2nd、m3rd、P4th、dim5th、m6th、m7th
トニックを統一させて各スケールを弾いて見ると、その音を通る辺りで大きく響きが変わっていることを感じられるはずです。
続いて、メジャーの時と同じ様に、実際に響きを感じる為のフレーズを弾いてみましょう。
トニックはA音で、弾くポジションは先に載せた3ノート・パー・ストリングの弾き方でやっていきます。
ロクリアンについては、そもそも、Xm7(♭5)をトニックコードとして扱えないので、モードとしては扱わない(※基本的には)、と言う事になっている様ですが、一応、違いを確認するために、フレーズだけ弾いておきましょう。
譜例、Aエオリアンスケール
これは順当なマイナー感ですね。変な言い方になりますが、このスケールを弾くと、しっかりと暗い響き、雰囲気のメロディーになります。
譜例、Aドリアンスケール
こちらはエオリアンに比べると、全体としては暗めの響きなのですが、どんよりした感じが薄れて、スマートさが出てきます。
ドリアンの響きは、「都会的な暗さ」と表現されることがありますが、正にそんな感じですね。
やはり、M6th を通ると、エオリアンとの違いがよくわかります。
ちなみに、少し話が逸れますが、インタバールを表す時に、数字と共に「M(メジャー)」「m(マイナー)」の文字を使いますよね。
この「M」、「m」はコードやキーに関連した話の時、M=明るい、m=暗い、とされる事が多いですが、単音同士の場合にも大方当てはまります。
例えば、M2nd、M3rd、M6th、M7th等の音は、トニックに対して明るい響きを持っていて、m2nd、m3rd、m6th、m7thなどの音はトニックに対して暗い響きを持っています。(※基本的には)
試しにtonic→M6th→tonicと弾いた時と、tonic→m6th→tonicと弾いた時をじっくり聴き比べてみると、前者の方が比較的明るく、後者の方が比較的暗く感じるはずです。
これは当然、M3rdとm3rdで比べると一番わかりやすいのですが、2、6、7度でもMの付いた音程の方が明るく、mの付いた音程の方が暗い響きになる傾向にあります。
これはあくまで、トニックと任意の音の、単音同士の関係性の話なので、ハーモニー的な観点まで行くと、必ずしもそうなるわけでは無いのですが、おさえておくとメロディーを作る時などに雰囲気をコントロールする事が出来ます。
譜例、Aフリジアンスケール
これまでの2種よりもエスニックな(民族的な)雰囲気のスケールですね。
やはり特性音であるm2ndの響きが顕著で、この辺りを強調するとミステリアスなムードが漂います。
このスケールにM3rdを加えると、それはスパニッシュ・8ノート・スケールになるので、そちらの方面に近い響きも持っています。
後、実はヘヴィ・メタル系のリフ等でも結構使われてたりもしますね。
譜例、Aロクリアンスケール
聴いての通り、他のスケールに比べて安定感が薄く、個人的には、暗い色の絵の具にさらに変な色を混ぜて行く様な印象があります。
構造が近いので、フリジアンの次に出しましたが、より響きの違いを感じたい場合は、エオリアンやドリアンと聴き比べると差が際立つでしょう。
さて、繰り返しになりますが、スケールの指板上での音の配置(ポジション)に慣れてきたら、次は音を良く聴く事に注力しましょう。
最終的に、スケールを自由にパラパラ弾ける状態を目指してもいいのですが、そのスケールの響きを理解していないと単なる音の羅列になってしまいます。
そもそもモード奏法は、調性音楽の調性が作り出す枠組みを広げる(逃れる?)為に、取り入れられたものです。(※音楽史的には、調性音楽よりも先と言っていいかもしれませんが)
これまでであれば、メジャーキーの曲はメジャースケールで、マイナーキーの曲はマイナースケールで構成していたものを、「リディアンやドリアンなどを主軸に置くことによって、別の響き、雰囲気で楽曲を構成(もしくは演奏)できる」と、こういう事ですね。
過去にやってきた事を理解していれば、メジャースケールとナチュラルマイナースケール以外のモード・スケールでも作曲が出来るはずです。
その時、各スケールの構造とその響きが分かっていないと、確信をもって作曲(や演奏)が出来ないはずなので、普段から良く聴いておくことが大事なのですね。
と、言う事で今回は以上になります。
ありがとうございました。
大沼
※次回、ギタリストの為のモード奏法vol.09はこちらから
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