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【ギターと音楽の教科書】vol.57『複雑なコードアレンジや、特殊なスケールが出てくる理由』

【vol.57】複雑なコードアレンジや、特殊なスケールが出てくる理由

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※前回vol.56はこちら

どうも、大沼です。

前回までで、マイナーキーの楽曲演奏に必要な、基本的なルールを覚えました。

実際の所、このくらいの知識があると大概の曲はどうにかなってしまいます。

わからない所があったとしても、今までの知識を使って書籍などで調べれば、そういった部分も、大方解決できるはずです。

なので今回は、少し先回りをして、レベル高めの理論を解説していこうと思います。

内容的にはそれなりに難しい部分ですので、一度で理解しようとせずに、実力が上がったと思った時に、繰り返し読み返してもらえれば、と。

今の時点では、よくわからなかったとしても、しばらく経ってから読み返してみたらわかる部分も出てくるでしょう。

ジャズ、フュージョン系の音楽をやりたい人は必須の知識ですので、じっくリゆっくりマスターしていきましょう。

それではまず、今回の内容ですが、一言で言ってしまえば『音楽理論の概念』についてのお話しです。

繰り返しになりますが、僕のメルマガの読者さんには、ジャズやフュージョンといった音楽的に高度寄りなジャンルが好きだったり、「将来的にそれらをやりたい」と言う人が結構います。

で、いざそう思って、ジャズ系のアドリブ理論などを学ぼうとすると立ちはだかるのが、急にどこからか現れる、セカンダリー・ドミナント等の複雑なコードアレンジや、オルタード、コンビネーション・オブ・ディミニッシュ、ホールトーンなどの謎のスケール群です。

これらの謎理論は、多くの場合、書籍などを読むと「こういう時にこれが使えますよ~」と言うような解説がなされるのですが、そもそも、

『そのスケールや理論がどこから来ていて、なんで使えるのか?』

を把握していないと、

『そこでそれが使えるのはわかった。で、どうしたらいいの?』

という状態になりがちです。(僕もそうでした)

なので今回は、ヤツ等がどこから来て、どういう解釈をされ、『こういう時に使えるよ』という定義付けをされているのか?

その辺りの『概念』や『理論の大枠』を捉えていきましょう。

それぞれの具体的な使い方やフレーズを解説すると相当なボリュームなるので、まずは「こういう所から来て、こうなっているのね」と言う、理論の大枠の部分だけ、理解してもらえればOKです。

それに、ぶっちゃけてしまうと、僕自身、ジャズ系のプレイヤーではありませんので、そういった謎スケール達の理屈は知っていて、ある程度は使う事も出来ますが、ジャズ、フュージョンを専門に演奏されている人達ほどは詳しくありません(笑)

それらのジャンルを突き詰めて行きたい人は、そういった先生に習うなり、教本を買って勉強するなりして、専門の人達のノウハウを学んでいきましょう。
(というか僕も、ジャズ等の分野に関しては、現在進行形でそうやって勉強しています)

ただ、そういったジャンルをやるにあたって、そもそもの理論の大枠を知っているのと知っていないのでは、学習効率が大きく変わってくるので、今回テーマとして取り上げました。

ではまず、複雑な理論を解説するに当たって重要なキーワードが2つあるのですが、それはなにかと言うと、

『“共通の構成音”と“それが持っている機能”による代理関係』と、『拡大解釈』

です。

音楽理論の発展形に関しては、全てではありませんが、大部分がこの2つの概念によって説明できます。

それではまず、『共通の構成音と機能による代理関係』についてなのですが、これは多くの場合コードアレンジで使われます。

どういうことかと言うと、

『とある元々のコード「X」に対して、その「X」と構成音が似ている、他のとあるコード「Y」があるとしたら、「Y」は、 「X」と同じ(近い)機能を持つコードとして、「X」の代わりに使える』

と、言う話です。

例えば、key=Cのトニックの主要和音であるCM7と、トニックの代理和音であるEm7、Am7は、共通音が多い事によって同じ「トニックのグループ」としてまとめられていますよね。

なので、G7⇒CM7の進行と同種の進行として、G7⇒Em7やG7⇒Am7が、トニック系コードへの解決として分類されます。(※この場合は偽終止と呼びます)

こういった2つのコードを対比した時の共通点によって、『共通の構成音と機能による代理関係』が成り立ちます。

もちろんコードを変える事によって聴こえ方は変わるので、何時、どのコードを使うのか?はアレンジによって調整していきます。

他にも、『裏コード』と言う言葉を聞いたことがあるかと思いますが、それも同じ理屈です。

先ほどと同じく、key=Cのダイアトニックコードを例にしましょう。

key=Cのダイアトニックコードの中に、ドミナントの機能を持つG7と言うコードがありますね。

で、先に言ってしまうと、そのG7の裏コードはD♭7になるのですが、その2つのコードにはちゃんとした関係性が存在します。

まず、ドミナントコードは、コードとして不安定な響きを持つものでしたが、その不安定感を作りだしているのは、m3rdと♭7thの2音によるトライトーン(3全音)の関係性です。

この「トライトーン」が聴覚的な不安定感を醸し出しているのですが、次のトニックコードに進行した時にそれが解消されるので、ドミナント⇒トニックの進行で不安定⇒安定の流れが出来ます。

ここはコードの構成音をよく見てみるとわかるのですが、G7の構成音はroot(G)、M3rd(B)、P5th(D)、♭7th(F)ですね。

対してD♭7の構成音は、root(D♭)、M3rd(F)、P5th(A♭)、♭7th(C♭)=(B)と、まったく同じトライトーンが形成されています。

この、「両者で同じトライトーン」がトニックであるCM7に進行した時に解消されるので、G7⇒CM7 の進行のドミナントコードの代理として、D♭7⇒CM7という、G7 に対する裏コード、D♭7を使った進行が成り立つのです。

以上の理屈から、key=Cのツーファイブの進行としてDm7⇒G7⇒CM7がありますが、そのドミナントを裏コードに変えたDm7⇒D♭7⇒CM7と言う進行が出てくる、と。

これも『共通の構成音と機能による代理関係』と言えますよね。
(※構成音が似てるんだから、代わりに使ってもいいよね、と言う拡大解釈とも言える)

ちなみに、『裏コード』は正式には『置換ドミナント』と呼び、ドミナント7thコードに対するアレンジとして使います。

これらの例の様な、

『いくらか同じような構成音が含まれていて、同じような機能を果たせるんだから、元のコードの代わりにそれと似ている別なコードを使っても良いよね』

と言う考え方が『共通の構成音と機能による代理関係』になります。

それでは次に、『拡大解釈』の方にいってみましょう。

まずは『セカンダリー・ドミナント』についてです。

通常、ドミナントコードは、その楽曲キーのトニックコードへの解決を促す「Ⅴ7」がその役割を担います。

そしてDm7⇒G7⇒CM7のような、ルートが4度上行(もしくは5度下降)で進行するものを、力強く自然な進行である事から『強進行』と呼ぶのでしたね。

なので「ツーファイブワン」の流れは「強進行」です。

この強進行を、
『楽曲の中で、ダイアトニックコードの1つ1つに、それぞれ作ってしまおう』
と言うものが『セカンダリー・ドミナント』の理屈です。

例えば、key=Cの1‐6-2-5(Ⅰ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴ)の進行は、CM7⇒Am7⇒Dm7 ⇒G7ですね。

そしてこの進行の中の、「Dm7にセカンダリー・ドミナントを当てよう」と考えた場合、CM7⇒A7⇒Dm7 ⇒G7という進行に変えることが出来ます。

赤字の部分にDm7をⅠm7と見た場合の、ドミナント⇒トニックの強進行が新たに出来ていますね。

そしてこの理屈をさらに推し進めると、Dm7をⅠm7としてみた場合のツーファイブとして、Em7(♭5)⇒A7⇒Dm7の進行を先ほどの進行に入れることが出来ます。
(※なぜEm7(♭5)が出てくるのか?は、key=Dm のダイアトニックコードを確認してみましょう)

例えばこんな感じで。(※縦線で1小節とした場合の例)

|CM7 ⇒|Em7(♭5)⇒A7⇒|Dm7⇒|G7|

この様に、

『その楽曲のキーの、Ⅰ度のコード以外のダイアトニックコードに対しても、無理やりドミナント7thを当ててもいいよね。だって強進行って良いものだし』

みたいな理屈が『セカンダリー・ドミナント』のアレンジになります。

もう1つ例をあげてみましょう。

先ほどと同じで元の進行はCM7⇒Am7⇒Dm7 ⇒G7です。

この中のAm7にセカンダリー・ドミナントを当てるとするならば、このようなアレンジが出来ます。

|CM7⇒|Bm7(♭5)⇒E7⇒|Am7⇒|Dm7 ⇒G7|
(※CM7⇒|E7⇒Am7⇒|Dm7 ⇒|G7とかでも良い)

見ての通り、AmをⅠm7としてみた場合のツー・ファイブが出来ていますね。

この様にノン・ダイアトニックな(=元のキーのダイアトニックコードに含まれていない)ドミナント7thのコードを、無理やり元のキーのダイアトニックコードに当てて強進行を作るのが、『セカンダリー・ドミナント』の理屈です。

もちろんこれも、アレンジとして適切であるかどうか?が一番重要なことなので、いつでもセカンダリー・ドミナントを使えば良い、と言うわけでもありません。

一般的には、楽曲の中で他のキーに転調したい時に、転調先のⅠ度のコードに対してノン・ダイアトニックなドミナントコードを当てる、と言うのがわかりやすい使い方ですね。

このセカンダリー・ドミナントの理屈を『拡大解釈』と定義するかは微妙なラインですが、まあ、良しとしておきましょう。

これまで解説してきたアレンジ理論を推し進めると、

『代理コードのさらにその代理コード』

だったり、

『セカンダリー・ドミナントの裏コード』

の様に、どんどんコード進行などを(理屈上は)変化させ、複雑にする事が出来るのですが、そうやって行き着く所まで行ってしまったのが、世の中にある『難曲』と言うものです。
(※難曲の難しさの全てが、こういった複雑なアレンジの所為とは限らないのですが)

さて、では最後に、オルタードやコンディミなどの謎スケールに関して、それらの出所と、「ここで使って良い」と言う理屈を解説していきましょう。

これらの謎スケールはまず、出所として、『3種類のマイナー系スケール』があります。

『3種類のマイナー系スケール』とは、

・ナチュラルマイナースケール(=エオリアンスケール)
・ハーモニックマイナースケール
・メロディックマイナースケール

の3つでしたね。

これまでの講座で、ナチュラルマイナースケールがチャーチモード7種の一部であるように、ハーモニックマイナーとメロディックマイナーにも、各スケールの構成音7音にそれぞれのモードが作られる、と言うお話をしました。

(※ハーモニックマイナーのモードに関しては、最近少し学びましたね。メロディックマイナーについては、今後の内容です)

で、いくつかある謎スケールの中でも代表的なものである、

・オルタードスケール
・リディアン♭7thスケール
・ハーモニックマイナーP5thビロウスケール
・ディミニッシュスケール(※)

は、ハーモニック、メロディックの各マイナースケールの中のモードスケールに含まれています。

(※本来のディミニッシュスケールは、厳密にはハーモニックマイナーのモードスケールではありませんが、構造が近しいのとわかりやすさからこうしています)

これらを分類してみると、

※メロディックマイナー系

・オルタードスケール
・リディアン♭7thスケール

※ハーモニックマイナー系

・ハーモニックマイナーP5thビロウスケール
・ディミニッシュスケール(※)

と、なります。

この話は単純で、ハーモニック、メロディックの各マイナースケール上のモードスケールを見ていけば、普通に登場します。

なので、まずはそれぞれを見ていきましょう。

現時点では「ここにあるのね」と言う確認をするのが目的なので、1つ1つを覚える必要はありません。

赤枠で囲った部分の、ダイアトニックコードがどんなものになっているのか?と、モードスケールの名称だけチェックしてください。

これらの存在を確認したところで、もう一度良くダイアトニックコードを見てみると、半分のコードがドミナント7thのコードである事がわかります。

さらにハーモニックマイナーでの、Ⅴ7とⅦdim7、メロディックマイナーでの、Ⅴ7とⅦm7(♭5)は構成音がほぼ同じなので、Ⅶ度のコードはⅤ7と代理関係にあります。

なので実質、上記の図で赤枠で囲ったコードとスケールは、ドミナント7th系(のスケール)としてひとまとめにすることが出来るのです。

なので、これらの謎スケールを使える場所と言うのは「主にドミナント7th系のコードの上」と言う事になりますね。

厳密にはもうちょっと細かいルールみたいなものもあるのですが、とりあえずは、

オルタードやらディミニッシュやらの謎スケールは、多くの場合X7 (ドミナント7th)のコード上で使うもの、

と言う解釈でOKです。

で、例えばマイナーキーの楽曲と言うものは、基本的には、ナチュラルマイナーのダイアトニックコードで構成されますよね。

そのマイナーキーの曲を、先ほどの裏コードやセカンダリー・ドミナントなどを使ってアレンジしていくと、ノン・ダイアトニックなドミナント7thのコードが曲の中で出てくる事になります。

そのナチュラルマイナーのダイアトニックコードには存在しないドミナント7thに対して、コード進行の前後関係やアレンジを考慮すると、一連の進行の中に、ハーモニックマイナーやメロディックマイナーのダイアトニックコードの流れを見ることが出来るのです。

なので、普通にマイナーキーの曲を作っていたら出てくるはずの無い、オルタードやらリディアン♭7thやらのスケールが出てくる、と言う事ですね。

で、そうしていったものを、さらに『拡大解釈』をすると、

『3種のマイナー系スケールのドミナント7th上で、オルタードとか使えるんだったら、別にメジャーキーのドミナント7th上でオルタードとか使っても良いよね』

と言う事になり、ジャズ系のアドリブ論では、

『ここのツーファイブでは、オルタードとか、ディミニッシュとか使えますよ』

という、1つのコード(もしくは進行)に対して、使えるスケールが複数登場する、という理屈が出てくるのです。

後、他の代表的な謎スケールの中に、コンビネーション・オブ・ディミニッシュや、ホールトーンスケールと言うモノがありますが、これらも主にドミナント7th上で使うものになります。

こららスケールも、その構成音を元にコードを構成するとX7系のコードが出来上がります。

なので、ドミナント7thに対応していて、その上で使える、と、そういうわけです。
(※詳しくはこの講座の終盤で解説します)

さて、結構なボリュームのテキストになりましたが今回は以上です。

アレンジ理論、アドリブ理論と言うものが、最初にお話した、

『共通の構成音と機能による代理関係』と、『拡大解釈』

である事がわかってもらえたら嬉しいです。

今回の内容は、別に全てをすぐに覚える必要はありません。

ただ、『理論の大枠』だけ捉えておいてもらえれば、今後困った時に、答えを導き出す為のヒントになると思います。

音楽理論というのは、元々存在した楽曲を分析して、後付で体系化したものなので、まずは『楽曲ありき』です。

ただ、楽典に関して何の知識も無いままに、演奏する事だけを進めていくと、必ずどこかで壁にぶち当たるので、そういう時にロジックから解析していく為に必要です。

おそらく、現時点で1回読んだだけでは、全てを理解する事は不可能なので、『困った時に使う辞書』の様な感じで、今回のテキストを活用してもらえれば、と、思います。

では、また次回。

ありがとうございました。

大沼

※次回vol.58はこちらから

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名前:大沼俊一

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~全てのギタリストに音楽の基礎教育と、
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