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【ギターと音楽の教科書】vol.40『ダイアトニックコードと終止形』

【vol.40】ダイアトニックコードと終止形

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※前回vol.39はこちら

こんにちは、大沼です。

前回までで、「ダイアトニックコードの分類と機能」についての基本的な知識を一通り学びました。

実際のコード進行を例に出したので、「どのように楽曲が成り立っているのか?」が、具体的にイメージ出来たのではないでしょうか。

今の所メジャーキーの事例しか出していませんが、マイナーキーの場合でも基本的には同じような考え方になります。
(※マイナーキーの解説の時に細かい部分を説明します)

で、前回のテキストで確認したように、一般的な楽曲であれば、大半の部分がそのキーのダイアトニックコードで構成されています。

特殊なコードアレンジがあったとしても、結局それは、これまで学んでいたことを発展させたものだったり、応用させたものだったりします。

文字通り、今学んでいるコード理論と言うものは、楽曲の「土台」となる知識なわけですね。

と言うことで今回は、それらの知識を実用ベースで生かす為の「コード進行の鉄板の形」を学んでいきましょう。

このテキストでは「耳コピに使える」とか「耳コピしてください」とか、「耳コピ推し」をすることが結構ありますよね?

これは別に、「耳コピをすること“だけ”」を勧めているわけではないのです。

じゃあ、なぜこんなにも勧めるのか?というと、『“耳コピに使う能力”というのは、結局、“音楽をやる上で必須の能力”』だからです。

それは「単に音楽を聴くこと」から「実際の演奏」までに使う全ての作業が、耳コピをする時に使っているスキルとほぼ一致する、ということです。

「耳コピの能力が上がると言うのは、「音楽家としての実力が上がる」とほぼ同義です。

なぜなら、「聴く(聴く事が出来る)」、「分析する」、「演奏する(表現、再現する)”」の、3つの力を全て使うのですから。

我々が普段、楽器の練習やライブなどの本番で行っていることは、

自分と周りの音を聴いて
→周り(他者)が何をやっているのかを分析、把握して
→自分が何をやるのかを決めて
→楽器を演奏する

と言うことですよね?

これらのプロセスを、楽曲の中で、自分も演奏をしながら、瞬時に行っているわけです。

その、「聴く」、「分析する」、「演奏する」のベースとなる能力全てをほぼ同時に鍛えるのに、耳コピはベストな方法なのです。

(※もちろん耳コピ“だけ”がベストなのではなく、他にも効果的な練習はありますが)

で、その、耳コピがスムーズに出来るようになるための基礎知識として、今学んでいるようなものがある、ということです。

さて、前置きが長くなりましたが、今回のテキストでは、コード進行の鉄板の形、要するに、

『曲の中でよく出てくる形(コード進行)』

を覚えます。

これを知ってから、今まで弾いてきた曲を見返してみると、「ああ、ここの事ね」と理解が進むことでしょう。

前回は、ダイアトニックコードの分類と機能、そして、それらが進行の中でどう使われているのか?を実際の曲を例に学びました。

そのダイアトニックコードの分類とは、以下のようなものでしたね。

※メジャーキー時

・トニックグループ
 主要和音  Ⅰ (ⅠM7)
 代理コード  Ⅲm (Ⅲm7)、Ⅵ (Ⅵm7)

・ドミナントグループ
 主要和音  Ⅴ    (Ⅴ7) 
 代理コード Ⅶm(♭5) (Ⅶm7(♭5)) (←このコードは注意が必要)

・サブドミナントグループ
 主要和音  Ⅳ (ⅣM7) 
 代理コード Ⅱm (Ⅱm7)

そしてそれらのコードグループの機能としては、

トニック→ホーム(家)のようなものなので、どのコードにも進める(そして基本はトニックに帰ってくる)

ドミナント→主にトニックに進みたくなる(そして大体トニックに進む)

サブドミナント→基本的にはどこにでもいけるが、ドミナントに進む事も多い

と、この様になっていました。

さて、ダイアトニックのコードグループには、上でお話しした機能の他に、鳴らした時の“感じ”として以下のようなものがありましたね。

・トニック→安定

・ドミナント→不安定

・サブドミナント→やや不安定

そしてコード進行は基本的に「安定に向かって進む」と。

実際の所、この「安定に向かう」とは「トニックに向かう」とほぼ同義です。

で、これらを踏まえた上で、コード進行の全体像をざっくりと説明してしまうと、

(多くの場合)トニックからスタートして、色々とコードを通過して、またトニックに落ち着いて終わり

と言う事になります。

この「トニックに落ち着いて終わり」という部分が重要で、コード進行には、トニックに終わる為のパターン(進行)があるのです。

そして「終わる為のパターン」にも「よく出てくるもの(終わり方)」があり、名前がついていたりします。

その名前とは『終止形(しゅうしけい)』、もしくは『ケーデンス(cadence)』、『カデンツ(kadenz )』と言うもの。

『終止形』は日本語、『ケーデンス』は英語、『カデンツ』はドイツ語ですね。

意味としては、「終止形」で見ると、「終わる、止まる、形」なので、音楽用語としてはそのまま「コード進行が一旦落ち着く形(パターン)」の事を指しています。

カデンツ、もしくはイタリア語でのカデンツァも、文脈によっては若干、定義が変わることもある様なのですが、実用レベルでは「ほぼ同じものを指している」と思って良いでしょう。

実際の会話の中では、ポピュラーミュージック系がルーツの人達は「終止形 or ケーデンス」、クラシック系がルーツの人達は「カデンツ or 終止形」をよく使って(言って)いる感覚があります。
(※あくまで僕の実感として、ですが)

まあ結局、どの単語を使っていようが、大概の場合言っていることは同じです。

と言う事で、今回の本題、その終止形(コード進行のパターン)を見ていきましょう。
(※このテキストでは3つの単語の内から“終止形”を使っていきます)

先にも言ったとおり、終止形とは、

『コード進行が始まって、トニックに安定するまでの、よく出てくる形(パターン)』

なわけです。

それはどんなパターンなのかと言うと、まずは『ドミナント→トニックの流れ』が大本となります。

ダイアトニックコードのインターバルで言うならば、

Ⅴ→Ⅰ

の進行ですね。

このⅤ(ドミナント)→Ⅰ(トニック)の進行により、聴覚上では「不安定→安定」と一度落ち着くことになるので、それを「(コード進行が)終止する」と表現しているわけです。

これは前回題材にした“Photograph”を含め、ほとんど全てと言ってもいい位の楽曲で見られる進行です。
(※西洋音楽のロジックがベースになっていれば)

それ位、よく出てくる、と言うよりは、「あって当たり前」レベルのものと言えるでしょう。

この終止の感覚を体験するために、例としてよく挙げられるのは、誰もが耳にしたことのあるであろう、あの、ピアノでの「起立→礼→着席」の感じです。


試しにC→G→Cとコードをゆっくり弾いてみてください。

きっと、あの“教室や体育館でお辞儀をした時の風景”が思い浮かぶはずです。

で、その次は、コードをC→Gと弾いて、Gで止めてみてください。

なんだか、次にCのコードをものすごく弾きたくなりませんか?

この「次にCを弾きたくなる感じ=トニックに安定したくなる感じ」が、この時(key=C時)のドミナントであるGコードの機能です。

ドミナントコードが醸し出す不安定感を、トニックコードに進む事によって安定させたくなるんですね。

これは人間の感覚として、どういうことが起こっているのかと言うと、まず、事前に楽曲やコードを何も聴いていない状態から、Cコードを弾く(聴く)と、そのCコードを『調性(key)の基準』としてあなたの感覚が捉えます。

『あ、なんだかこのCコードは、key=C時のⅠのコードっぽいな』と感じるわけですね。

この時、頭で楽典的な知覚をしていなくても、感覚(聴覚)は自動的にそう感じます。
(※細かいことを言えば、聴いている長さ(時間)や強弱などにも影響されますが)

ただ、まだその時点では「(実質的に)key=C時の1度のコードっぽいな~」と感じているだけで、調性が決定してはいません。

重要なのは、次に聴く事になるコード。

この、次に聴く、“二つ目のコード”によって、調性(キー)が(大方)決定するのです。

例えば(トライアドの)Cコードだけだと、そのコードを含むkeyとしては、

key=Cに対して、CコードはⅠ(1度)
key=Fに対して、CコードはⅤ(5度)
key=Gに対して、CコードはⅣ(4度)

と3種類ありますね。

トライアドのCコードを4和音のCM7にした場合は、

key=C (CM7=ⅠM7)
key=G (CM7=ⅣM7)

と2種類のkeyが候補に挙がります。

この様に、Cコード1つを聴いた時点では、聴覚では「Ⅰ(ⅠM7)っぽいな」と感じていても、音楽理論的にはkeyが候補から絞りきれていないことになりますね。

ですが、ここから二つ目のコードを聴くと、一気にkeyが固まってきます。

今、例にしているのはkey=CのⅠ→Ⅴにあたる、C→Gの進行なので、次にGコードを鳴らす事になりますね。

そうすると、最初に「key=Cっぽい」と感じていた所に、key=Cのダイアトニックコードに含まれるGコードが聴こえてくるので、『お、これは(ほぼ)key=CのⅠ→Ⅴじゃん』と人は感じるわけです。

そしてこの進行の関係性は、トニック→ドミナントなので、安定(Cコード)からスタートして、不安定(Gコード)と来て、そこで止めると、トニック(Cコード)に戻って安定したくなるのですね。

これが『終止形』的な、「安定に向かおうとする進行(音の流れ)」を聴いた時に人間が感じる事です。

さて、それっぽい解説をしましたが、ここで勘のいい人は、「CとGの2つのコードだけだと、key=GのⅣとⅠにも一致するんじゃないの?」と、考えている事でしょう。

これはその通りで、トライアドのCとGのみを見たら完全に一致します。

「じゃあそれはkey=G時の進行の様には聴こえないのか?」と言う事になりますね。

この辺り、先に、さらっと注釈でいれた、「音の長さ(音価)と強弱」が関係してくるので、詳しく見ていきましょう。

まず、先に確認なのですが、先のC→G→Cの進行をkey=Cとして、4和音にした場合、CM7→G7→CM7となり、これはもろにkey=Cと言う調性を感じます。

仮にC(トライアド)→G7(4和音)とした場合でも、Ⅴ7(ドミナント7thとしての5度7th)は各キーに1種類なので、
聴覚としてはkey=Cであることを強く感じますね。

基本的には、同時に鳴らす音が増えるほど、keyの拘束力みたいなものは強くなります。
(※ダイアトニックスケールの構成音に準拠したダイアトニックコードであれば)

次に、トライアドのCとGのみを見た時、これらをkey=Cの観点から見たらⅠとⅤ、key=Gの観点から見たらⅣとⅠになります。

これまでと同じ様に、C→G(→C)と弾く場合、全てのコードを大体同じ音符の長さ、かつ、同じ強さで鳴らすと、ほぼkey=Cの様に聴こえます。

この時、起こっている事は、まず最初のCコードを鳴らした時、他に基準がないので、そのCコードが調性の基準の様に感じ、次のGコードがドミナントの様に感じるわけですね。

ですが次は、C→Gとこれまでと同じように弾いたのち、そのGコードを出来るだけ長ーく鳴らし続けてみましょう。

この時、最初のCが鳴った時点では、Cコードはkey=CのⅠの様に聴こえ、「このCはkey=CのⅠ度(トニック)っぽい」と言った感覚が残ります。

で、その後のGコードでは、鳴らした直後はkey=CのⅤっぽく感じるのですが、そのGを長くのばせば伸ばすほど、最初のCコードで感じたkey=Cの調性感が薄れてきて、GコードがⅤ(ドミナント)ではなく、key=GのⅠ(トニック)の様に聴こえて来るのですね。

そうしてから、もう一度Cコードに戻ってみても、最初のCの様なトニック感が弱く、CとGのどちらが基準なのかがはっきりしない感じになってきます。

ここまでの事をまとめると、CとGの2つのコードだけを使う場合、

C(key=CのⅠっぽく聴こえる)
→G(最初はkey=CのⅤ的に聴こえる)
→Gをのばす(段々key=Cの調性感が薄れてきて、key=G のⅠの様な気がしてくる)
→C(微妙にkey=CのⅠの様にも感じるが、トニック的な安定感が弱く感じる。
   もしくは前のGコードがⅠの様に聴こえていたら key=GのⅣの様に感じる)

と、この様な感覚の変化が起こっている事になりますね。

今の例の様に、CとGの2つのコードのみだと少し変化に乏しいですが、ここに例えばDコード(key=GのⅤ)などを加えると、完全にGがトニック的に聴こえますね。

これは結構、大雑把な例ですが、こんな感じで、鳴っている音の構造、時間的な長さ(音価)、音の強弱などに、人間の調性感は影響を受けています。

さて、少し話がずれましたが、先のⅤ-Ⅰに続き、残り3つ、『終止形』の重要な進行を見ていきましょう。

まずは、前回も出てきた、

SD(サブドミナント)→D(ドミナント)→T(トニック)

の進行。

代表的なのが、各分類の主要和音を使った、

Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ (ⅣM7→Ⅴ7→ⅠM7)

の進行です。

これは『やや不安定→不安定→安定』の鉄板の流れでしたね。

全て主要和音の進行なので、これを1つの基準として色々なパターンを考えていきます。

次によく聞くのが、

Ⅱ→Ⅴ→Ⅰ (Ⅱm7→Ⅴ7→ⅠM7)
(※ツー・ファイブまたはツー・ファイブ・ワン)

の進行。

これはⅡm(Ⅱm7)が、サブドミナント(Ⅳ、ⅣM7)の代理和音なので、結局の所、

SD(サブドミナント)→D(ドミナント)→T(トニック)

の進行と同じです。

細かい解説はここでは割愛しますが、コード進行として、強い解決感(進行感)が出てくることから、楽曲でよく使われます。
(※詳しく知りたい場合は『強進行』で調べてみてください)

本当によく出てくるので、作曲、アドリブ論や、演奏時の対応のパターンなどで取り上げられることが多く、言葉だけでも聞いたことがある人は多いはずです。

そして最後の3つ目が、

Ⅳ→Ⅰ

の進行です。

これは要するに、サブドミナント(やや不安定)→トニック(安定)の、ドミナントを経過しない終止の形です。

不安定感の強いドミナントを通らないので、若干の緩さの残る進行の形、と、言っていいでしょう。

サブドミナントコードは基本的には(ある程度)どこにでも進めるので、ドミナントを通らずにトニックに行ってしまってもいい、と、言うことですね。

さて、今回は合計4つの終止系を確認しました。

結局、これを知っていると何が良いのか?と言うと、テクニカルな面で言えば、まずは、耳コピ、採譜などの聴き取る作業の時にkeyがすぐに判別できます。

要は、コードを聴き取っている時、“トニックに解決する流れ”が見えるのならば、どのコードがトニックかがわかるのでkeyの把握はすぐですからね。

要するに、

どのコードがどの分類にあたっていて、最終的にどのコードに落ち着こうとしているのか?

これが見えるようになってくる、と言う事です。

その次の段階として、コード(もしくは単音でも)を聴き取ることに慣れてくると、聴いただけで、D→TやSD→D→Tの流れがわかるようになったりします。

そうなったら、トーナル・センターはどの音で、そこからどんなコードが構成されるのか?が一発でわかるので、より曲を把握するスピードが増しますよね。

あとは広い視点で見れば、最終的には、「楽曲の予測、分析能力の向上」といった話になってくるので、まあ、何をするにしても役に立つわけです。

これらの要素も、最初はパッと判別するのは難しいと思いますが、弾きたい楽曲のダイアトニックコードをノートに書き出すなどして、地道に慣れていってください。

では、今回は以上です。

今回の内容を踏まえた上で、今までコピーしてきた曲のコード進行が、どの様になっているのかを確認してみると、また違った風景が見えてくるでしょう。

ありがとうございました。

大沼

※次回vol.41はこちら

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