vol.05 各種モード・スケールの枠組みについて ~メジャー系~
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では、vol.05、始めていきましょう。(※前回vol.04はこちらから)
これまで、4回に渡って、モード奏法全体を理解する為の内容をやってきました。
今回は、それらを踏まえた上で、ギター側でモード・スケールを見ていく為の基本を学んでいきたいと思います。
ここで特に重要になって来るのが、vol.03でやった、
『旋律に主体を寄せる≒モード・スケールの選択肢が我々にある』
と言う概念です。
要するに、「モーダル(旋法的)」の大元は、
『コード(進行)側に、あまり動きや変化がなく(=結果的に調性感が弱く)、旋律を演奏、構築する為のスケールの選択肢に、ある程度の自由度がある』
と、こう言う状態です。
(※モーダルなコード進行と言うモノもあるんですが、それは後々やります)
具体的な例としては、
・CM7単体が、長い時間鳴り続けている時、コード側が提示している音がC、E、G、Bしかないので、調性が完全には提示されていない。
・コードは(基本的には)元々、何かしらのスケールから構成されているので、この場合、C音をトニックした、M3rd(E)、P5th(G)、M7th(B)を含むスケールが元になっている。
・多くの音楽は、全7音のダイアトニックスケールを基準にしているので、この場合、『C、「X」、E、「X」、G、「X」、B』の「X」の3音が未決定である。
・CM7単体だけが鳴っている場合、この「X」の3音が未決定なので、他に指定などが無ければ、ここに任意の音を当てはめて、モード・スケールを選択することが出来る。
と、この様なものを挙げましたね。
この時、「X」に入れる音に、比較的、自由度があるのならば、CM7が提示している4音は、『大元のスケールの枠組み(≒スケール選択の制限)』として捉えることが出来ます。
これを、今回のタイトルである、『各種モード・スケールの“枠組み”』と見た場合、
『ならば、その他(の音)をどうすると、どういったモード・スケールと関係していくのか?』
ここを、代表的なモード・スケールと絡めて考えていくのが今回の内容です。
■チャーチ・モード7種のメジャーorマイナーの分類と、基準に見るモード・スケール
さて、まずは、モード奏法の基本となる、7種類のチャーチ・モード(スケール)ですが、以下の様になっていましたね。
1、アイオニアン(=メジャースケール)
2、ドリアン
3、フリジアン
4、リディアン
5、ミクソリディアン
6、エオリアン(=ナチュラルマイナースケール)
7、ロクリアン
便宜上、アイオニアンから並べていますが、特定のスケールに優位性などがあるわけではありません。
とは言え、音楽理論で使う用語(ローマ数字など)は、アイオニアンの構造を基本に見ていたりもしますが。
この7種の内、構成音にM3rdを含む、メジャー系のモード・スケールが、
・アイオニアン
・リディアン
・ミクソリディアン
で、m3rdを含む、マイナー系のモード・スケールが
・エオリアン
・ドリアン
・フリジアン
・ロクリアン
になります。
この内、一般的な調性音楽では、
・長調(メジャーキー)の基準スケールが、メジャースケール(=アイオニアン)
・短調(マイナーキー)の基準スケールが、ナチュラルマイナースケール(=エオリアン)
と、なっているので、各スケールの構造を考えていく時には、
・メジャー系スケール各種の、大元の基準と見るスケールがアイオニアン
・マイナー系スケール各種の、大元の基準と見るスケールがエオリアン
と、この2種類のスケールとの違いを「そのスケールの特徴」として見ていきます。
■チャーチ・モード7種の中の、メジャー系モード・スケール
さて、ここまでの解説は、言葉だけでは微妙に分かり辛いかもしれませんが、実際に弾いてしまえば簡単なものです。
今回は、上記7種のスケールの内メジャー系の3種を見ていくのですが、「メジャー系のスケール」と言う事は、それらのスケールからは、通常「メジャー系のコード」が構成できる事になります。
「メジャー系のコード」は、代表的なものとしては、
・『C』などのメジャートライアド
・『CM7』などのM7thを含む4和音
・『C7』などのm7thを含む4和音
の3つが挙げられますね。
それぞれのコード・トーン(構成音)のインターバルは、
・『C(メジャートライアド)』→ root(C)、M3rd(E)、P5th(G)
・『CM7』 → root(C)、M3rd(E)、P5th(G)、M7th(B)
・『C7』 → root(C)、M3rd(E)、P5th(G)、m7th(B♭)
となっているので、これらの音を、『コード側が作り出している、ある種の強制力』であり、『枠組み』の様に見ます。
完全なフリープレイ(ソロ(独奏)プレイ)でもない限り、大概の演奏時にはコードが鳴っているはずなので、そのコードが作り出しているハーモニー(≒強制力、枠組み)とバッティングしないように、モード・スケールを選ぶことになりますね。
細かい事を言えば、コードとバッティングするような音を使っても、弾き方、鳴らし方によっては(ある程度は)大丈夫だったりもするのですが、そこを解説すると話がややこしくなるので、今回は素直な解釈だけを見ていきます。
では、ここから3種のメジャー系モード・スケールが登場するわけですが、まずはそれぞれの構造を確認してみましょう。
いつもの様に、トニックはCでいきます。
・Cアイオニアン(メジャー)スケール(※構成音→C、D、E、F、G、A、B)
tonic、M2nd、M3rd、P4th、P5th、M6th、M7th
・Cリディアンスケール(※構成音→C、D、E、F♯、G、A、B)
tonic、M2nd、M3rd、♯4th(=♯11th)、P5th、M6th、M7th
・Cミクソリディアンスケール(※構成音→C、D、E、F、G、A、B♭)
tonic、M2nd、M3rd、P4th、P5th、M6th、m7th(♭7th)
アイオニアンの構造を基準に見た時に、違いとして現れてくるのが赤字で示した音です。
逆に言えば、それ以外は一致している、とも言えますね。
これらの違いを、各スケールの視点から見ていくと、
・アイオニアン → リディアンとは4度、ミクソリディアンとは7度が違う
・リディアン → アイオニアンとは4度、ミクソリディアンとは7度が違う
・ミクソリディアン → アイオニアンとは7度、リディアンとは4度が違う
となり、この3種のメジャー系スケールの中では、違いは4度と7度の部分に出て来る事になります。
ならば、元々の7音構成のスケールから、その、違いが出て来る2音の部分(4&7度)を抜いて5音にしたら、3種のスケールを使い分ける必要がなくなりそうですが、それは結局、皆さんお馴染みの、メジャーペンタトニックスケールということですね。
1オクターブの範囲で、各スケールを見てみましょう。
・Cメジャーペンタ
・Cアイオニアン
・Cリディアン
・Cミクソリディアン
メジャーペンタは、『四七(しな)抜き音階』等と呼ばれることもありますが、文字通りの構造になっていますね。
この様に見ると、いきなり3種類も登場するメジャー系のモード・スケールも、見てくれは、そこまで大きく違うわけでは無い、と言う事が分かると思います。
もしかしたら、ここで「じゃあ、もう全部ペンタで良いんじゃね?」と思うかもしれませんが、そういう訳にもいきません。(※1つのアプローチとしてはアリですが)
構造だけを見たら、ペンタは7音構成のスケールの代替物に見えそうですが、実際は「響きの全く違うスケール」として独立させて捉えておいて下さい。
それでは、スケール同士の関係性も見たところで、最後に、バックに想定するコードとの関係性を見ていきましょう。
結論を先に言ってしまえば、その時鳴っているコードの構成音と、その上で使うスケールの構成音が、直接ぶつからなければ良い、と言う話です。
例えば、バックがCなどのメジャートライアドであれば、root(tonic)、M3rd、P5thの、3つの音が一致しているスケールを弾けばいいわけですね。
メジャートライアドと、各スケールの構造を見比べるとこうなります。
・Cアイオニアン
tonic、M2nd、M3rd、P4th、P5th、M6th、M7th
・Cリディアンスケール
tonic、M2nd、M3rd、♯4th(=♯11th)、P5th、M6th、M7th
・Cミクソリディアンスケール
tonic、M2nd、M3rd、P4th、P5th、M6th、m7th(♭7th)
・Cメジャーペンタ
tonic、M2nd、M3rd、P5th、M6th
赤字で示した通り、完全にメジャートライアドの構成音と一致していますね。
仮に、Cコード単体がバーンと鳴っている曲(や範囲)があった場合、理屈としては上記3種(とメジャーペンタ)の内、どのスケールを使っても良い事になりますね。
後は、楽曲全体や、他の要素との兼ね合いで、自由にやってもよかったり、よくなかったりする、と言う話です。
同じ様に、残りのCM7、C7でも見ていくと、
・CM7上では、コードのM7th が、スケールのm7thとバッティングするのでミクソリディアンが使えない事になり、使えるのはアイオニアン、リディアン、ペンタの3種
・C7上では、コードのm7thが、スケールのM7thとバッティングするので、アイオニアン、リディアンが使えない事になり、使えるのはミクソリディアン、ペンタの2種類
と、この様な考え方で、モード・スケールを選んでいくのが、モード奏法の基本です。
モーダル≒旋律側に主体を寄せる、と言うと、「旋律を奏でる為のスケール」の方が偉い様な気もしますが、あくまで、『キーやコードとの兼ね合いの中で、旋律の自由度が高まった状態』くらいに捉えておくと、音楽的なバランス感覚が身についてくるでしょう。
これらのロジックを基本として、世の中の楽曲を分析していくと、実際は、そのロジックから逸脱するモノも出てくるのですが、それは、この様な基本を理解した上で、あえて無視したり、響き的にアリならばOK、と言う判断からくるものです。
この辺りの、イレギュラーなプレイ(や構築)まで理解できるようになると、コンテンポラリー(現代的、現代最先端的)なものや、アヴァンギャルド(前衛的)なものをやっている人達の音楽にも、食指が動くかも知れませんね。
それでは、今回は以上になります。
ありがとうございました。
大沼
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