【vol.53】マイナーキー実践編 ~その2~ ハーモニックマイナーについて
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こんにちは、大沼です。
引き続き、「マイナーキー実践編」として、マイナーのツーファイブについて学んでいきましょう。
前回は、
マイナーキーの楽曲の場合、本来、ナチュラルマイナースケールから成り立つダイアトニックコードでコード進行が成り立っているはずが、「Ⅴm7」が「Ⅴ7」に変わっていて、ハーモニックマイナー的な音使いが出てきた
と言う話でしたね。
そしてその理由として、キーセンターの半音下に位置する、「導音(リーディング・トーン)」の存在が挙げられました。
これは、ナチュラルマイナースケールのm7thの音を半音上げてM7thにし、コード進行(やメロディー)としての解決感を強めるのが目的です。
今回は、その辺りの理屈がどうなっているのか?もう少し詳しくやっていきましょう。
キーワードは、
『ハーモニックマイナースケールのダイアトニックコード』
これです。
では、始めていきましょうか。
題材は引き続きkey=AmのⅡ-ⅤーⅠである、
Bm7(♭5)⇒E7⇒Am7
の進行です。
前回の話を踏まえると、key=Am時のⅤ7であるE7の部分は、Aナチュラルマイナーではなく、Aハーモニックマイナーから来るコードである、と言う事でしたね。
これは、も少し突っ込んだ話をすると、
ナチュラルマイナースケールで構成されるダイアトニックコードがあるように、ハーモニックマイナースケールで構成されるダイアトニックコードもある、
で、そこからⅤ7のコードを持ってきている、と、こういう事です。
そして、メジャー、マイナーの時に、アイオニアン~などのモードがあったように、ハーモニックマイナーにも7つのモードがあります。
こんな話をすると、「うわー、またコードとかスケールを覚なきゃならないのかよ。」と、思うかも知れませんが(笑)、別に覚えなくても良いです。
(※普通はそんなに使わないので)
それらの中にちゃんとⅤ7がある事と、一部のコードだけ確認しておいてください。
(でも、ジャズとかやりたい人は、出来るだけ覚えておくと良いことがあるかもしれません)
と、言うことで、ハーモニックマイナーのダイアトニックコードとモードスケールはこちら。
※ハーモニックマイナースケールのダイアトニックコードとモードスケール
ⅠmM7 ハーモニックマイナー
Ⅱm7(♭5) ロクリアン13th (or ロクリアン♮6th)
♭ⅢaugM7 アイオニアン♯5 (←『♭ⅢM7(♯5)』のコード表記の方が多いかもしれません)
Ⅳm7 ドリアン♯4
Ⅴ7(♭9) ハーモニックマイナーP5thビロウ (or フリジアン・ドミナントorフリジアン♯3)
♭ⅥM7 リディアン♯9
Ⅶdim7 オルタード♭♭7 (orスーパー・ロクリアン・♭♭7)
いやぁ、いきなりこんなものを出されても、とんでもない謎言語っぷりだと思いますが、実は、今まで学んできた事を使えば、大体のものは普通に解明できたりします。
(※でも無理に覚えなくても良いです)
カッコでの注釈が多いのは、構造的に色々な呼び方が出来たり、されていたりするから、ですね。
興味のある方は、ハーモニックマイナースケールをじっくり見ながら、以前学んだ「コードの成り立ちの法則」と、「インターバル的な音名の呼び方」のそれぞれの知識を駆使すれば、音構成が名前の通りになっていることがわかるでしょう。
ですが、とりあえず今回重要なのはここです。
ⅠmM7 ハーモニックマイナー
Ⅱm7(♭5) ロクリアン13th
♭ⅢaugM7 アイオニアン♯5
Ⅳm7 ドリアン♯4
Ⅴ7(♭9) ハーモニックマイナーP5thビロウ
♭ⅥM7 リディアン♯9
Ⅶdim7 オルタード♭♭7
赤字にしたのは、今、問題になっている『Ⅴ7』ですね。(※「♭9」の事は今は忘れてください)
後は、ハーモニックマイナーのトニックコードである「ⅠmM7」と、たまに使う事になる「Ⅶdim7」の、2つのコードとモードスケールの名前を、何となーくで良いので、頭の片隅に入れておきましょう。
普通の曲を弾くならば、大方、その3つくらいで十分ですので。
さて、マイナーキーのツーファイブでは、多くの場合、Ⅴm7ではなくてⅤ7を使う、と言う話でしたが、そのⅤ7のコードがこちらにはしっかりありますよね。
要するに、ナチュラルマイナーのダイアトニックコードには存在しない「Ⅴ7」と言うコードは、この、ハーモニックマイナーのダイアトニックコードから持ってきているわけです。
(※音楽の歴史的には、コードとスケールのどちらから持ってきたのかは僕はわかりませんが)
なので、前回確認したとおり、Ⅴ7の部分では、音構成もハーモニックマイナーに変わっていますよね?
(※ナチュラルマイナーのG音がG♯音に変わっている)
と、この様な理屈で、マイナーキーのⅡ-ⅤーⅠには、Ⅴ7が出てくるのです。
さて、基本的な理屈もわかったところで、次に、『じゃあ、実際のギタープレイでは何を弾くのか?』について考えていきましょう。
今、題材にしているコード進行はkey=AmのⅡ-ⅤーⅠなので、進行はBm7(♭5)⇒E7⇒Am7ですね。
Bm7(♭5)とAm7の2つのコードについては、普通にAナチュラルマイナースケールを弾けば良いのですが、問題なのはE7ですね。
とは言え、この講座をずっと受けているあなたなら、ここまでの解説で、「ハーモニックマイナー系(のもの)を弾くんでしょ」という予想が付いていることでしょう。
で、まったくその通りなんですが、ここでもう一度、ナチュラルマイナーとハーモニックマイナーのダイアトニックコード表を見てみましょうか。
それぞれを対比してみるとこの様になりますね。
通常、Aマイナーキーの場合、Aナチュラルマイナー(Aエオリアン)系のスケールを使う事になりますが、Ⅴ7の部分はAハーモニックマイナーから来ているコードなので、Aハーモニックマイナー系のスケールを使います。
で、上の表を見ての通り、Ⅴ7であるE7上では、『EハーモニックマイナーP5th ビロウ』というスケールが対応しているので、それを使ってメロディーやソロを弾く事になります。
(※ハーモニックマイナー・パーフェクトフィフス・ビロウと呼びます)
このスケールの名前だけを聞くと「なんじゃそら」って感じですが、要するに、
『基準とするハーモニックマイナースケールのトニックから見て、P5thにあたる音から弾き始めるスケールですよ』
と、そのまんまの名前だったりします。
(※『Below (ビロウ)』が『以下』とか『より下に』と言う意味ですね)
今回のkey=Amの例で言えば、基準音がA音なので、「EハーモニックマイナーP5thビロウスケール」と言ったら、
『Aハーモニックマイナースケールの構成音の、トニックであるA音から見て、P5thであるE音から順に弾いていくスケール』
と、こういう話です。
スケールの名前がやたら長いので、『Hmp5↓』みたいに省略して書かれる事も多いです。
(※この講座でも、今後は『Hmp5↓』略称を使います。)
さてさて、長ーい解説もひと段落したところで、実際に使う、スケールポジションを覚える作業に入っていきましょう。
まずは基本としての、「Aハーモニックマイナースケール」の重要ポジションを2つと、Ⅴ7に対応する「EHmp5↓スケール」の重要ポジションを2つずつ覚えます。
とりあえず、この、合計4つのポジションを覚えているだけでも、かなりツーファイブに対する対応力が上がりますので。
それでは、Aハーモニックマイナーの重要ポジションから。
図、Aハーモニックマイナー重要ポジションその1
譜例
図、Aハーモニックマイナー重要ポジションその2
譜例
次にHmp5↓の重要ポジションです。
図、Ehmp5↓スケール重要ポジションその1
譜例
図、Ehmp5↓スケール重要ポジションその2
譜例
まずはこの4つのポジションを覚えましょう。
指使いは、アドリブなどで実際のメロディーを弾く際は、これとは違ってくる場合もあると思いますが、トレーニングとしてはこの辺りが一番自然に弾けるでしょう。
もちろん、後々は自分の弾きやすいように変えてもらっても構いません。
これらのスケールポジションを、過去の講座で練習してきたようなパターンや、自分が普段トレーニングとして行っているパターンに当てはめて、スケールの雰囲気(響き)を感じながらじっくり弾いてみてください。
ついでに確認して欲しい事としては、結局、どちらのスケールも構成している音自体は同じなので、それぞれのポジション内にもう片方のスケールも見る事が出来る、と言う点です。
Aハーモニックマイナーのポジションの中にEHmp5↓がありますし、その逆も然りです。
その様な見方もしておくと、スケールを把握するスピードが早くなるでしょう。
それでは、今回は以上です。
学んだ事としては、ハーモニックマイナーのダイアトニックコードと、重要スケールである、ハーモニックマイナースケールと、Hmp5↓スケールの重要ポジションでしたね。
次回は、今回覚えたスケールをどの様に使っていくのか?
その辺り、譜例を交えながら解説して行きたいと思います。
ありがとうございました。
大沼
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