【vol.29】楽曲の成り立ちを考えてみる ~その1~
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こんにちは、大沼です。
ここ数パートで新しい知識をある程度学んだので、そろそろ、その知識の「使い方」に入っていこうと思います。
『知識の習得』というものは、覚えて→使って→身につけて、完結するものですよね。
なのでその「使って」の部分を、既存の曲を事例に細かく分析しながらやっていきましょう。
参考にする楽曲は、一番最初にペンタのソロでやった、ビートルズの『Let it be』です。
この曲は音楽理論を学ぶ時、書籍などでも、結構な確率でサンプルとして出てくるんですが、もう、ワザとそう作ってんのかってくらい理屈がわかりやすいんですね。
keyもCだし、楽曲内のほぼ全てのコードが、Cキーのダイアトニックコードという親切設計。
元々、ピアノメインの曲なので、細かく音を採るとベース音やコードの内声がちょこちょこ動いていたりするんですが、それを差し引いても、理論的にかなり素直なアレンジになっています。
誰が言ったか、『名曲とは得てしてシンプルなもの』という一文を体現するような曲になっています。
と、言うことで、この曲のコード進行を例に、最近覚えていた、スケール、コード、keyなどの話が実際の曲中ではどう使われているのか?を確認していきましょう。
さて、まず、いきなりですが、この曲は『key=C』です。
Cキーの曲、ということは、
・この曲で基準とする音はC音(=トーナル・センターはC音)
・この曲で基準となるスケールはCメジャースケール(※C(メジャー)キーの曲なので)
・この曲のメロディーやコードは、ほとんどがCメジャースケールの構成音で成り立っている
・この曲を構成するコードは、ほとんどが、Cキーのダイアトニックコード
(C、Dm、Em、F、G、Am、Bm(♭5)の7つ。(※トライアドの場合)
と、キーとそこから派生する、スケールやコードの知識があるだけで、もう、この曲についてこれくらいの事がわかるわけです。
要点をまとめると、
『「Let it be」って曲は、key=Cだから、ほぼ、CDEFGABの7音(Cメジャースケール)で、メロディーなどが作られていて、使われているコードは、ほとんどがCキーのダイアトニックコードの7つ(※上で挙げたもの)だよ』
ってことです。
音楽理論や楽典というものは、言ってしまえば『音楽をやりやすいようにする為のルール』みたいなもので、当然、詳しく知っていたほうが有利なわけです。
いつかどこかで話したような気がしますが、音楽用語などは、『「その言葉の意味」がわかっていたら、超便利なツール』なのです。
だってそうですよね?
例えばスタジオとかで、いきなり誰かに「ちょっとこの曲でソロ弾いてよ!」と言われたとして、理論などを知らない人は、音を探り探り弾きながら色々試してみて、気がついたら、たかが8小節のソロに2時間とか掛かったりしてる可能性があります。
でも、ちゃんと勉強している人は、譜面やコード進行を確認して、
『あーはいはい、Cキーの曲ね。じゃーCメジャーペンタ主体で纏めるか。ソロ中のコード進行は、と・・・、ああ、部分転調とかしてないから、ずっとCメジャー系でいけるな。メジャー系だったらあのフレーズ使えるかな・・うんぬんかんぬん・・・。』
と、全体をチェックしたら、ピロピロ~、とやって音作り含めて30分以内で終了、だったりする訳です。
まあ、この辺は「どこまで内容に凝るのか?」という部分や、その時の状況が関わってくるので、時間的早く終われば良いというわけではありませんが、単純に、ありとあらゆる事に圧倒的な差が出ていることがわかってもらえるはずです。
当然、両者を比べたら、出てくるフレーズのクオリティも全然違います。
とまあ、少し話が逸れましたが、「今、大事なことやってるんだな」と、思ってもらえれば。
で、let it beのコード進行なんですが、使われているコードは、先にも書いた通り、key=Cの時のダイアトニックコードである、
※3和音(トライアド)の場合
1、C
2、Dm
3、Em
4、F
5、G
6、Am
7、Bm(♭5)
の7つになります。
7thまで含めた4和音の場合はこうですね。
1、CM7
2、Dm7
3、Em7
4、FM7
5、G7
6、Am7
7、Bm7(♭5)
さて、この、キーとそこから導きだされるスケールとダイアトニックコードについては、以前の講座(vol.24)で少し解説しましたが、その時は結構さらっと終わらせたので、今回、もう一度復習しておきましょう。
まずダイアトニックコードとは、大雑把に言ってしまえば、『その曲を構成する、主要な7つのコード』のことです。
曲を把握する為の重要な要素は3つ。
1、key(メジャーorマイナー)
2、スケール(ダイアトニックスケール)
3、コード(ダイアトニックコード)
これですね。
キーは、
「楽曲全体で基準とする1音」と、「曲を構成する基本の音階(メジャーかマイナーのスケール)」
を表したものでしたね。
スケールは、ギター中心の見方で考えると、『形(ポジションの形)』みたいな感覚があるかも知れませんが、根本的な意味としては、『1音1音を特定の間隔で並べた音の集合体』ですよね。
例えば、Cメジャースケールだったら、『指板上でトニックのC(ド)音をここに見て、こういう形(ポジション)だよね~』ではなく、
C音を基準に、「全全半全全全半」の間隔で、1音ずつ「C、D、E、F、G、A、B」と順番に並べた音の集合体だ、という考えの方が正確です。
この辺りのイメージの違いは、言葉ではちょっとわかりにくいかも知れません。
実は、スケール(と言うか音楽理論全般)は、『ピアノの鍵盤』で考えたほうが、イメージしやすい場合が多いです。
ギターはまったく同じ音が複数のポジションで鳴らせるので、形(スケールポジション(ブロックごと)の形)で覚えた方が、「記憶の効率」は良いです。
しかし、スケールの内容(意味、構造)を把握する場合は、意識的に1音1音を確認していく必要があるのです。
ピアノの場合は、1つの(高さの)音は1つの鍵盤でしか鳴らせないので、余計なことを気にせずに、自然と1音1音の確認が出来ている状態になります。
無理やりギターで例えるならば、『ネックが超長い、1本しか弦の張っていないギター』で演奏している様な感じでしょうか。
ギターは今までのポジション練習でやっていたような、縦の移動(弦を移ること)をすると、それまでの音の並びがぶった切られたような感じになり、「音の並び」というよりも、「形(ポジションの一塊)」を弾いている感覚に近くなってきます。
なので、身近に鍵盤楽器がない場合は、携帯やパソコンのアプリでピアノのソフトがあるので、それらをダウンロードしてスケールやコードを弾いてみてください。
ギターとはまた違った感覚で、スケールを見ることが出来ると思います。
さて、またまた話がそれましたが、キー、スケールと来て、次はコードですね。
この解説の順番でもわかるとおり、楽曲というのは、
1、キーが決まって、
2、そのキーに対応したスケールが決まって、
3、そのスケールの構成音から、出来上がるコードが決まる、
とこういう順番で3つの要素が関連していきます。
(※順番に、と言うよりは、ほぼ同時に3つが設定される感じ)
もちろん、「作っている」段階では、必ずしもそういう順番を気にしているわけではないですが、結局、最終的にはこういった関連性になります。
スケール、スケールと連呼すると、またまたポジションのイメージが湧くかもしれませんが、先ほどの解説にもあったように、スケールは「1音1音の集合体」です。
重要なことなので何度も言いますが、Cメジャースケールで言えば、それは、今まで覚えてきた「ポジション」のことではなく、『CDEFGAB』の7音(の音階)なワケですよね。
Cキーで基準となるスケールはCメジャースケールで、Cキーの楽曲で使われる音は、Cメジャースケールの7音で(ほとんどが)出来ている。
(※転調などのアレンジをしない限り)
なので、『Cメジャースケールの7音、「ドレミファソラシ」を使って、この曲で主に使うコードを構成してみましょうよ』と、そういう順番で考えるとわかりやすいでしょう。
そうして導き出される7つのコードが『ダイアトニックコード』である、と。
さて、ダイアトニックコードの概念の解説はこの位にしておいて、実際に7つのコードを構成する作業を追っていきましょうか。
まず、Cメジャースケールの7音それぞれは主要な音なので、
コードのルート音にしてみます。
先ほどのコード一覧をもう一度。
1、C
2、Dm
3、Em
4、F
5、G
6、Am
7、Bm♭5
赤字で示した通り、Cメジャースケールの構成音がルート音になっていますね。
次に、『「ルート音以外の」コードに加える音』を決めていくわけですが、そのルールは『ルート音から1音おきに音を積み重ねる』でした。
(※実際はこれ以外のルール(考え方)もあります)
Cコードを例に挙げると、C、D、E、F、G、A、Bとスケールがあり、それをルート音Cから1音おきなので、
『C、D、E、F、G、A、B』
となりますね。
なので、Cコードの構成音は、C、E、G、(B)である、と。
(※B音はM7th)
このルールで行くと、Cメジャースケールの構成音で、C音をルートに1音おきに音を積み重ねてコードを作った場合、
C(root)、E(M3rd)、G(P5th)、のメジャートライアドである『C(メジャー)』のコード
が自然と出来上がる、と、そういうことです。
(※M7thであるB音まで入れて、4和音にするならばCM7)
とあるキーの楽曲で主要なコードが決まる仕組み、と言うのはこの様になっています。
もう1つ例を挙げると、Dmならば、D音からスタートして、
『C、D、E、F、G、A、B、(C)』
となって、D(root)、F(m3rd)、A(P5th)のマイナートライアドである、Dmのコードになります。
(ルート音Dから見て、m7thであるC音まで入れたらDm7)
単純に、D音スタートとするならば、『D、E、F、G、A、B、C』と並べ替えて見てもいいですね。
他のコードも、全て同様のルールに則って構成していくと、自然と、
1、CM7
2、Dm7
3、Em7
4、FM7
5、G7
6、Am7
7、Bm7(♭5)
の7つのコードが出来上がります。
こういった仕組みにより、曲を分析する時は、キー⇒スケールと来て、その曲を構成するダイアトニックコードまでがわかる、と。
ずっとこの講座を受けてきたあなたなら気が付いていると思いますが、これまでやってきたことを全て使っていますよね。
この位が分かっていると、以前とは曲の見え方が変わってくると思いますが、僕としては、「この点と点が繋がる感じ」を、じっくりと味わって欲しいと思っています。
実際のところ、音楽理論は、実はそんなに難しくは無いけれど、きちんとした順番で一つ一つ習得していかないと、必ずどこかでつまずく様な感じです。
(※本質的にはどんな分野でもそうだと思いますが。)
この辺り、学ぶ順番と、1つ1つの用語の意味や構造を曖昧に把握してしまっていると、音楽理論の学習を本来の難易度よりも難しくしてしまうのでは無いかと、個人的には思ったり思わなかったり。
さてさて、「let it beをやる」と言っておきながら、まだ全然出て来ていないわけですが、復習と解説をしていたら、結構な長さになってきたので、今回はこの辺で終わりたいと思います。
一気に大量にやっても頭がこんがらがってしまいますからね。
本題のlet it beには次のテキストから入っていきましょう。
では、また次回。
ありがとうございました。
大沼
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