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  1. 音楽理論マスター講座【ギターと音楽の教科書】
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【ギターと音楽の教科書】vol.41『“グルー”と“フック”』

【vol.41】“グルー”と“フック”

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※前回vol.40はこちら

こんにちは、大沼です。

前回、コード進行が終わる形、“終止形(ケーデンス)”のパターンを4つ学びましたね。

基本的にコード進行は、その4つの進行をベースに、代理コードを使ったり、ダイアトニックコードと構成音が似ているコードを入れ替えたりして作られています。

複雑な曲であればあるほど、コードの代理関係が拡大解釈されてたり、もしくは、わざと理論を無視して(≒解釈を広げて)アレンジされていたりするのですが、基本は「“(T→)SD→D→T”のような流れなんだ」と思ってもらえればOKです。

とにかく、多くの場合、安定(T)からスタートして、紆余曲折を経て不安定になっていき(SD、Dなど)、最終的にまた安定(T)する、と。

大概の曲は、この流れになっています。

とあるコード進行の研究書には、こんなことが書いてあります。

『一般的な楽曲のコード進行は、60~90%の“グルー”と、40~10%の“フック”で構成されている』

と。

ここで言う“グルー”とは、keyに対応するダイアトニックコードや、そこから派生する比較的単純なアレンジで構成された、所謂「フツーのコード進行」の事です。

で、その“グルー”が楽曲の大半を占める(60~90%)、と。

そして“フック”とは、その楽曲をその楽曲足らしめるような個性的なアレンジ(今回の文脈では主にコード進行のアレンジ)の事を指しています。

で、その“フック”は残りの40~10%くらい。

(※楽曲やジャンルにもよりますが、”フック”の割合は、現実的には30~10%くらいに落ち着くと思います)

ある曲のコード進行が、“グルー”(=普通のコード進行)ばかりで構成されている場合、その曲は、他の曲と代わり映えのない、ありふれた楽曲になりがちです。

(※もちろん、楽曲の出来には他の色々な要素が関わってくるので、必ずしもそうなる、とは言えませんが)

かといって、理論的、聴覚的に突飛なものになりやすい“フック”だらけでは、楽曲の調性や雰囲気がまとまらず、一貫性を感じない曲が出来上がることでしょう。

(※前衛的な方向性を指向しているのならば、わざとそうする事もあります)

なので、“グルー”と“フック”の割合を調整していく必要がある、と、こう言うことです。

もしかしたら、

「個性的なんだったら、“フック”を沢山入れてもいいじゃん」

と思う人もいるかもしれません。

もちろん、入れたければ“フック”を沢山入れてもいいんです。

そこは個人の自由ですので。

ただ、考えなくてはならないのは、『人間がそれを聴いた時、どう感じるのか?』と、言う部分。

基本的に人間は、今まで触れたことのない異質なものには興味をそそられ、エキセントリック性に惹かれるのと同時に、それは未知なので不安を感じますよね。

“フック”もそれと同じです。

適切な範囲では刺激的で面白いものですが、個性的で突飛なものに一定以上ガンガン来られると、興味の範囲を超えて違和感を感じ、それが不快になってくるのです。

そこを緩和する為に、耳馴染みのある“グルー”が必要なんですね。

例えば、コード進行ではないですが、“フック”のわかりやすい例として、“変拍子”があります。

多くの場合、我々は4/4拍子の曲を「一般的な曲(のリズム)」として認知していますよね。

この「4/4拍子」を“グルー”とするならば、変拍子は“フック”です。

4/4拍子の曲の中に、突然、変拍子が入ってきたりすると、「ん?」とか「あれ?」とか「おっ?」とか感じたりしますよね?

それが適切な量(と配置)であるならば、『面白いもの、興味深いもの』になりますが、一定のラインを超えてくると、とたんに『うっとおしいもの』に変わってきます。

この辺りの、“グルー”と“フック”をコントロールするバランス感覚が重要なのです。

“ありふれた日常”の中に、ちょっとした変化やアクシデントが起こるのは適度に刺激的で楽しいものですが、一日中、ずーっとアクシデントに見舞われていたりすると、「もう勘弁してくれ」となるわけですね。

この考え方は、自分のオリジナル曲を作る時やアレンジをする時に特に大事になってきますが、 実は、アドリブをする際に全体構成を考える時や、ギターソロやメロディーなどを作る時にも使えたりします。

これからやろうとしているソロプレイの、どこが“グルー”でどこが“フック”に当たるのか?

この辺り、本当に上手い人のプレイでは、しっかりと見ることが出来ます。

ソロ全体の構成や、盛り上げどころ、盛り下げどころ、ストーリー性など、そういった観点から見てみると、新しい発見が沢山出てくると思います。
(※ラリー・カールトンのプレイなどが、わかりやすくて、そして上手いです。)

ギターソロで例えるならば、

ゆっくりと、音数少なく始まって、(←グルー)
だんだん盛り上げていってピークに達し、(←フック)
その後次の展開のために盛り下げる、(←グルー)

などがわかりやすい一例ですね。

もちろん楽曲の中での前後関係や、そもそも、盛り上げる必要も盛り下げる必要もない、“一定のテンションを維持した間奏”のようなものもあるので、その時々によって様々です。

例えば、“基本的に速弾きオンリー”のような楽曲で、しばらく聴いていて、「もうお腹いっぱいだよ」という感じになるのは、

本来、強烈な“フック”として成り立つ可能性のある“速弾き”がずっと続いて、“グルー”の様な状態になってしまっているから、ですね。

もちろん、本当に上手い人は“基本的に速弾きオンリー”の曲の中にも、“グルー”と“フック”を効かせる事もできたりするとは思いますが。

あ、ちなみに、今回のキーワードである“グルー”と“フック”という単語は、とある書籍の著者が、その本の中で定義している言葉なので、周りの人に話してみても、おそらく誰も意味がわからないと思います。

一応“フック”は「その曲の中で、人を惹きつける部分」と言う意味で使われる事もあるので、意味が通じることもあるかも知れませんが、“グルー”は(説明しないと)まずわからないでしょう。

仲間内で音楽談義をするときは、ご注意ください。笑

さて、珍しく文章のみの内容で、長々とお話ししてしまいましたが、今回は以上になります。

では、また次回。

ありがとうございました。

大沼

P.S.

今回出てきた、“グルー”と“フック”という単語が使われていたネタ元は、ATN出版から発行されている『ヒアリング・ザ・チェンジ』という書籍です。

内容は、ジャズ系の楽曲をベースにしたコード進行の研究書で、モノとしては中級者以上を対象にしたレベルになっています。

『楽典の基本は全部知ってるから、さらに勉強したい』と言う人は、手にとってみても良いと思います。

※次回vol.42はこちら

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名前:大沼俊一

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