【vol.39】ダイアトニックコードの分類、T、D、SD ~その2~
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こんにちは、大沼です。
今回も、前回に引き続き、ダイアトニックコードの分類についてやっていきましょう。
すでに実感があるかもしれませんが、このような知識があると、楽曲の見え方が変わってくるはずです。
前にも言いましたが、通常の楽曲と言うのは、全体の70~100%程度がダイアトニックコードで構成されています。
そして、それぞれのコードに役割があり、「このコードが来たら、次はこうなる(事が多い)」と言った様な、鉄板の進行があるのです。
しっかりとした音楽の知識を持っている人は、それを知っているので、まあ、よほど複雑な曲でなければ、
落ち着いて余裕を持って演奏できる、とそう言うことです。
楽曲の全体像を把握するのも速いですし、今演奏している所よりもさらに先の予測まで出来るわけですからね。
「曲を聴いてすぐ弾ける」とか、「耳コピが速い」とかも、これらの『把握、分析、予測』の各能力が高い事が理由です。
こんな話をすると、なんだかものすごくハードルが高いような気がしてくるかも知れませんが、実際問題、1曲ずつ地道にやっていけば、誰でも出来るようになるものです。
なにはともあれ、じっくりと着実に、音楽家としての成長を目指していきましょう。
では、まずはこれまで学んだ事の確認から。前回の内容を簡単にまとめると、(※メジャーキーの場合)
・7つのダイアトニックコードは、トニック、ドミナント、サブドミナントの3種に分類できる。
・キーに対して、Ⅰ度のコードがトニック、Ⅴ度のコードがドミナント、Ⅳ度のコードがサブドミナントとなり、それぞれを主要和音とする。
・ダイアトニックコードの残りの4つも、3種の何れかに分類される。
と、こういうことでしたね。
それぞれのコードとしての機能は、
・トニックコード
楽曲の始まりと終わり。
多くの場合、そのコードからスタートして、そのコードに戻ってくる。
家(ホーム)のようなコード。聴覚的な安定をもたらす。
・ドミナントコード
トニックコードに帰りたくなる。
「さあ、家(トニック)に帰ろう」と促す様なコード。
聴覚的にはやや強めの不安定さ、緊張感を感じる。
・サブドミナントコード
比較的どこにでもいける。
トニックに帰っても良し、帰らずに他のコードに行っても良し。
コード進行にバリエーションを付ける。聴覚的には多少の不安定さを感じる。
と、こんな感じのイメージを持ってもらえれば、わかりやすいでしょう。
そして、基本的にはこれらの機能を活かし、はたまたアレンジによっては無視したりして、曲の雰囲気、展開をコントロールしていくわけですね。
では、確認も済んだところで、ダイアトニックの残りのコードの分類と、引き続き“Photograph”を例に、コード進行がどうなっているのか?を分析していきましょうか。
まずはコードの分類ですが、前回のkey=A時のコード表はこのようになっていましたね。
※key=A ダイアトニックコード
Ⅰ、A(AM7)トニック
Ⅱ、Bm(Bm7)
Ⅲ、C♯(C♯m7)
Ⅳ、D(DM7)サブドミナント
Ⅴ、E (E7)ドミナント
Ⅵ、F♯m (F♯m7)
Ⅶ、G♯m(♭5)(G♯m7(♭5))
これをインターバルだけで見るならばこうなります。
Ⅰ(ⅠM7)→トニック
Ⅱm(Ⅱm7)
Ⅲm(Ⅲm7)
Ⅳ(ⅣM7)→サブドミナント
Ⅴ (Ⅴ7)→ドミナント
Ⅵm (Ⅵm7)
Ⅶm(♭5) (Ⅶm7(♭5))
で、上の表のように、Ⅰ度のコードをトニック、Ⅴ度のコードをドミナント、Ⅳ度のコードをサブドミナントの主要和音として、それらを基準にして残りの4つのコードを分類していくのです。
と言う事で、先に結論から言ってしまうと、基本的にはこの様に分類されます。
(※メジャーキーの場合)
Ⅰ(ⅠM7) →トニック
Ⅱm(Ⅱm7) →サブドミナント
Ⅲm(Ⅲm7) →トニック
Ⅳ(ⅣM7) →サブドミナント
Ⅴ (Ⅴ7) →ドミナント
Ⅵm (Ⅵm7) →トニック
Ⅶm(♭5) (Ⅶm7(♭5)) →ドミナント
この一覧表のコードを、それぞれのグループごとに分けるとこうなりますね。
・Ⅰ、Ⅲm、Ⅵmがトニックグループ(キーに対して1、3、6度のコードがトニック)
・Ⅴ、Ⅶm(♭5)がドミナントグループ(キーに対して5、7度のコードがドミナント)
・Ⅳ、Ⅱmがサブドミナントグループ(キーに対して2、4度のコードがサブドミナント)
で、なぜこのように分類されるのか?なのですが、簡単に言ってしまえば、コード同士で構成音が似ているから、代わりに使っても良いよねって事です。
トニックグループの3種を例に挙げると、例えばkey=Cの場合、主要和音であるⅠ度のコード=C(CM7)=ド、ミ、ソ(ド、ミ、ソ、シ)に対して、
・Ⅲ度=Em(Em7)=ミ、ソ、シ(ミ、ソ、シ、レ)
・Ⅵ度=Am(Am7)=ラ、ド、ミ(ラ、ド、ミ、ソ)
と、このように、一致している音が複数ありますよね。
なので、Ⅲ度とⅥ度のコードもⅠ度のコードの代わりに使える、と、そう言うことです。
他のドミナント、サブドミナントも、基本的には同じ理由でこのように分類されています。
ところで、今、「(あるコードの)代わりに使う」と言う表現をしましたが、あなたはどこかで
『代理コード』(※もしくは代理和音or Substitute chord)
という言葉を聞いたことはないでしょうか?
これは文字通り、『とあるコードの代理として、同じ様な働きを果たせるコード』の事を指しています。
その概念を理解するのに重要なのが、
『Ⅰ、Ⅳ、Ⅴ度のコードは、それぞれ主要和音である』
と言うことです。
例えば、トニック(コード)の主要和音はⅠ度のコードです。
同じように、Ⅳ度のコードがサブドミナントの主要和音で、Ⅴ度のコードがドミナントの主要和音となります。
基本のダイアトニックコードは7種類あるわけですが、そのコード群を構成しているのは、ダイアトニックスケールの7音ですよね。
(※全12音の音階の場合。今の例だとメジャーキーなのでメジャースケールの7音)
その7音を、いずれかの音から一定の間隔で積み重ねていったのがコードなので、複数のコード間で使う音が重複する事になります。
それが、先の分類で、Ⅰ(ⅠM7)をトニックコードの主要和音とした時に、
そのⅠ(ⅠM7)の代理として使えるのが、Ⅲm(Ⅲm7)とⅥm(Ⅵm7)のコードである、
と、これが『代理コード』の概念です。
同じ様に、
サブドミナントコードも、Ⅳ(ⅣM7)を主要和音とした時、Ⅱm(Ⅱm7)がサブドミナントの代理コード。
ドミナントコードも、Ⅴ(Ⅴ7)を主要和音とした時に、Ⅶm(♭5)(Ⅶm7(♭5))がドミナントの代理コード。
と、こうなります。
(※ですが、ドミナントの代理コードであるⅦm(♭5)は、純粋なⅤの代わりとしてはあまり出てきません。ですが一応、基本的な理論として覚えておいてください。)
さて、この様な理論がなぜ必要かというと、例えば何か楽曲があったとして、当然、その曲には(普通は)コード進行がありますよね?
その進行の中で、ある程度コードが進んで「そろそろ安定したいな」となった時、落ち着く先のコードが全てⅠ(ⅠM7)だったとしたら、聴いている側としては、「全部、同じような落ち着き方(安定の仕方)をしているな」と、感じてしまいます。
それはそれで、別に悪いわけでは無いのですが、バリエーション的な観点から見たら寂しい気もします。
と言うか、極端なことを言ってしまえば、代理コードの概念が無い場合、Ⅰ、Ⅳ、Ⅴ度の各主要和音ぐらいしか使えなくなってしまいますよね?
それでは非常につまらない、と。
(※もちろんⅠ、Ⅳ、Ⅴのコードだけでも曲は作れますが)
なので、このような分類をして、様々なバリエーションが生み出せるようにしてあるんですね。
まあ、所謂ポピュラー音楽で使われている理論は、元々先に「音楽そのもの」があって、それを後付で体系化したものなのだとしたら、誰かがどこかのタイミングでこの様なルールを決めたわけではなく、
『すでに世界に存在している音楽を分析したらこうなっていた』
が、正しいのかもしれませんが。
もしくは西洋音楽の体系が出来上がる歴史を辿っていったら、これらの理論を明確に分類した人と時期が存在するのかも知れませんし。
とまあ少し話が逸れましたが、ダイアトニックコードの分類が済んだので、実際の楽曲を事例に、コード進行がどうなっているのかを見ていきましょう。
引き続き“Photograph”を参考楽曲とします。
まず、“Photograph”はkey=Aなので、ダイアトニックコードとそれらの分類は以下のようになりますね。
※key=A ダイアトニックコードと分類
Ⅰ、A(AM7) トニック
Ⅱ、Bm(Bm7) サブドミナント
Ⅲ、C♯(C♯m7) トニック
Ⅳ、D(DM7) サブドミナント
Ⅴ、E (E7) ドミナント
Ⅵ、F♯m (F♯m7) トニック
Ⅶ、G♯m(♭5)(G♯m7(♭5)) ドミナント
これをもう少し見やすく纏めると、
※key=A時
・トニックグループ
主要和音 Ⅰ、A (AM7)
代理コード Ⅲ、C♯m(C♯m7)、Ⅵ、F♯m(F♯m7)
・ドミナントグループ
主要和音 Ⅴ、E(E7)
代理コード Ⅶ、G♯m(♭5)(G♯m7(♭5))
・サブドミナントグループ
主要和音 Ⅳ、D(DM7)
代理コード Ⅱ、Bm(Bm7)
と、こんな感じですね。
ちなみに以前もどこかでお話しましたが、可能ならこのテキストをプリントアウトしたり、上のようなダイアトニックコードの一覧をノートなどに書き写すと、非常に学習効率が上がりますのでお勧めです。
単純に、PC上だけで見るのとは違い、スクロールの必要がなくなるので確認しやすくもなりますしね。
では、“Photograph”のコード進行を見ていきましょう。
※Aパート
(※ここからはトニック→T、ドミナント→D、サブドミナント→SDと省略して表記します。ドミナントのDとコードのDが紛らわしいですが、どちらの事を指しているのかを注意してください)
まずは最初の4小節。
1、2小節目はA→F♯mとなっています。これはT(主要)→T(代理)の進行ですね。
トニックコードはホームのようなものなので、基本的にどのコードへも進行することが出来ます。
今回はT→Tという流れですね。
次の3、4小節目は、D→E→F♯m。
これは前回も少しお話しましたが、SD(主要)→D(主要)→T(代理)の流れです。
前回までの話だと、F♯mのコードが意味不明なものになってしまいますが、今回の話を踏まえてみてみると、ちゃんとトニックに安定していることがわかります。
5~8小節目は前回の通り、SD→D→Tの主要和音の流れです。
次の9、10小節目は、D→E→C♯m→F♯m。
これも今回の話で考えると、SD(主要)→D(主要)→T(代理、Ⅲm)→T(代理、Ⅵm)である事がわかりますね。
ちゃんとコード進行が安定に向かって進んでいます。
そしてAパートの最後11、12小節目のD→Eの進行ですが、これは次の展開(パート)へのSD(少し不安定)→D(不安定)→T(次の展開の安定、再スタート)と言った流れへの布石のようなものです。
今回の“Photograph”では、曲の構成がシンプルなので、そこまで変化は感じられないかも知れませんが、歌モノで良くある流れとして、Aメロ→Bメロ→サビみたいな展開がありますよね?
多くの場合、各パートの終了間際の小節では、次パートへの布石の様なコード進行が出てきます。
今回の“Photograph”では、1コーラス目はAパートを繰り返すので、11、12小節目のD(SD)→E(D)→曲頭のA(T)と言った流れへの、
2コーラス目は、11、12小節目のD(SD)→E(D)から、Bパートの頭のC♯m(Ⅲm、Tの代理)への、スムーズな流れが作られています。
では、Bパートの話も出てきたところで、次に進みましょう。
※Bパート
まず最初のC♯mは先ほどお話ししたように、Aパートの終わりから、SD(Aパート11小節目)→D(Aパート12小節目)→T(Bパートの頭)の流れです。
で、Bパートの1~4小節目は全てトニックコードですね。
トニックコードはどこへでも進行できるので、これでも進行としてOKなワケです。
(※でもずっと同じようなコードへばかり進行していると、変化が感じられずに聴いてて飽きてきます)
次の5、6小節目は、D(Ⅳ、SD)→Bm(Ⅱm、SD)のサブドミナントコードが続きます。
サブドミナントコードも、比較的どこへでも進行できるコードなので、大方、どのコードに行っても大丈夫なのです。
ただ、鉄板の流れとしては、サブドミナントが出てきたら次にドミナントへ進んで、トニックに落ち着く、というSD→D→Tの進行になる事が多いですね。
もちろんその辺は、作曲、アレンジ的にどうしたいのか?にもよりますが。
では最後の7、8小節目ですが、まず7小節目のGは無視して良いです。このコードは、key=Aのダイアトニックコードからは外れていますよね。
これはとあるアレンジ手法なのですが、今回はスルーで。その内解説しますので。
最後のEは、コードとしてはD(ドミナント)にあたるものですね。
これもAパートの最後のEと同じく、次の展開への布石としてのドミナントでもあり、もし曲の終了間際であるならば、最後にトニックのⅠ(など)へ進み、コードを「ジャーン!」と鳴らして曲を終わらせる為のドミナントでもあります。
最後の最後で不安定(D)→安定(T)の流れを作る為に良く出てきます。
と、言うことで、今回の楽曲の分析は以上になります。
重要なポイントは、
・各ダイアトニックコードの分類
・分類されたグループのそれぞれの役割
・主要和音と代理コードの関係
・トニックコード→どのコードへも進行できる
・サブドミナントコード→これも大体どのコードへも進行できる
・ドミナントコード→トニックへ行きたくなるし、実際にほぼトニックへ進む
・コード進行は基本的にはトニックへ進んで安定しようとする
と、こんなところでしょうか。
あらためて書き出してみると、今回、結構な分量をやっていますね。
これらは、いきなり全てを覚えようとせず、これから曲をコピーする度に、毎回確認していくことで身についていきます。
ですので、もう耳タコかもしれませんが、焦らずマスターしていきましょう。
ではまた次回。
ありがとうございました。
大沼
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